サイコシリアル [3]
今のところ、霞ヶ窪の行動は大体僕の予想通りだ。だから僕は、自分のアッパーと霞ヶ窪の斬り上げが衝突するように、そのタイミングに合わせて、コンマ数秒の世界を調整したまでだ。二つの拳が衝突するように。
結果。
霞ヶ窪は「いっ」と悲痛な声を一瞬だけ上げ、ナイフを落とした。
僕は、その落ちたナイフを拾いあげながら言った。
「案外、僕って体育の成績悪くはないんだよね」
「少しはやるじゃない」
「別に、お前に認めてもらう為にやってんじゃねーよ。なんなんだよ、その上から目線は。カニバリズムはそれが所定なの? というか、お前はもうカニバリズムじゃないか。さっき僕の事を『早く殺してあげる』と言っていたしね」
「・・・・・・・・・・・・」
霞ヶ窪は、黙った。武器をなくした彼女に為す術はないだろう。
「いいか、霞ヶ窪。何が『殺してはいない、食っただけ』だ。そんなのは、ただの表現の違いだ。食った=殺したなんだよ。食って殺すのも同じ。殺して食うのも同じ。意味合いが違うだけで・・・・・・お前は、それを戯贈にしようとしたんだよな。戯贈を殺そうとしたんだよな!」
僕は、激昂し霞ヶ窪の胸倉を掴んだ。掴み、押し上げた。半呼吸困難に陥る程度に首を圧迫して。
作品名:サイコシリアル [3] 作家名:たし