サイコシリアル [3]
「早く殺してあげるからね、涙雫君」
「あぁ、来いよ。手加減はするけど、容赦はしないからよ」
「威勢がいいことは良いことよ」
霞ヶ窪はそう言いながら、僕に向けて歩み寄ってきた。
一歩、また一歩と確実に、着々と。
僕は決めていた。
戯贈を愚弄した時から決めていた。この思いは決して揺るがぬ事のない。
「霞ヶ窪、お前は戯贈を侮蔑し愚弄し、弄んだ」
「だから、何?」
「忘れるな。忘れるなら知らしめろ。世界中のサイコ野郎に。戯贈には優秀な体がいるってことをな」
「戯れ言ね、馬鹿みたい」
「確かに戯言だな。知らしめることが出来ないんだよ、お前は。この場で終わるから」
僕は、そう言った直後に全力で駆け出した。
何も相手の歩みのペースに合わせることなどない。
合わせた瞬間に、僕の身が終わるのだから。
だから、全ての行動を全ての事を自分のペースで行う。
霞ヶ窪は言っていた。凶器を持たない人間が、凶器を持つ人間に勝てると思う、と。答えは簡単だろう。むしろ、相手が凶器を持っているからこそ勝てる、と言い換えてもいい。それこそ、ショットガンやの銃火器が出てきたら、さすがにお手上げだけれど、ナイフだったらこの僕の持論が適用される確率は、大だ。そして、霞ヶ窪のようなタイプなら尚更だ。確率で言えば、少しの可能性に目を瞑ればほぼ百パーセントへと跳ね上がる。
何故なら、凶器を持っている、という驕りがあるから、自尊心があるから、自信があるから、そして心の病が、精神的疾患があるから。
だからこそ、終わる。
作品名:サイコシリアル [3] 作家名:たし