サイコシリアル [3]
「だから、少女は食ったんだ。美女を食ったんだ。古来、中国に伝わる美女の内臓を食べると美しくなるという伝承を信じて」
そう、僕が話していること、それは。
「霞ヶ窪桜、お前の過去だよ。両親に捨てられようとも、惨めにもすがり付き、無駄に足掻いた無様な女。いいか、霞ヶ窪。お前は決して美しくはない、汚れきった女だ」
「何故・・・・・・それを?」
自分の過去を暴かれた霞ヶ窪は茫然自失。
何故、僕が霞ヶ窪の過去を短時間に知り得たかは、すぐに分かると思う。
だから、今は説明している暇はない。時間もない。
「いいか、霞ヶ窪。他人に過去を暴かれるというのは、実に不愉快極まりないんだよ。それがトラウマともなれば、尚更だ」
自分の過去を暴かれるというもの程、屈辱的なものはない。
自分だけが所有する秘密。それを暴く、知ることが出来るのは、それ相応の信頼関係を築かなければならない。
「結末はまだだぞ、霞ヶ窪。その捨てられた少女はどうなったと思う? 狂ったんだよ、惨めにも。無惨にも。頭がやられたんだ、いや、病られたんだよ。頭と心は直結しているからな。心まで病られてしまった。そんな奴が八方美人をしても、気味が悪いだけだよな。笑ってしまうよ。なぁ、霞ヶ窪桜」
「あははははははひひひひひひ。あー、もう本当に食べたい。食べたい。食べ
たい。食べたい。食べたい。食べたい。食べたい。食べたい。食べたい。食べた
い。食べたい。食べたい。食べたい。食べたい。食べたい。食べたい」
壊れた。
霞ヶ窪桜が壊れた瞬間だ。
心に傷を負った者は、実に脆い。
「あなたに何が分かるのよ、何が何が何が何が何が! お母さんも、お父さんも私に何もかも求めるから、だから食べるのよ。あぁ、そうだわ。涙雫君。あなたは美味しくなさそうだから、とても下品な味がしそうだから、殺してあげることにするわ。私に殺される記念すべき第一号よ。嬉しいでしょう? あは、あはは、あははははははははははっははははっっは、あはひゃは」
壊れた人間は怖い。
脆くて、壊れやすくて。壊れてしまえば簡単で。単純で。明快だ。
だから、怖い。
やることが極端になる。予想はしていても、想定外の結果にだってなりえることがある。
けれども、僕には分かる。
戯贈教えてくれる。全てがシンクロしている今、戯贈のサインすら見なくとも全てを悟ることが出来る。理解することが出来る。予想も想像も遥かに凌ぐ『読み』が出来る。
全ては僕に物語っている。
全ては、終わりだと。
作品名:サイコシリアル [3] 作家名:たし