サイコシリアル [3]
その時、僕は戯贈がまた意識を失っていることに気づいた。
ただ単純に目を瞑っているだけかもしれない。
しかし、指先が微かに動いているのが分かった。ただ無意識の中で動いている様にも取れるし、サインを送っているように取れる。意識が、思考が覚醒しているからこそ分かるものの、平常時では見逃しているかのような動き。
携帯を握りしめたままに。
サイン・・・・・・動き・・・ツートンツー・・・・・。
戯贈、お前は最高の頭脳だよ、全く。
僕にしか読み取れないじゃないか。難易度が高すぎるな、さすが僕の頭だよ。
『了解』僕は、霞ヶ窪に気づかれないよう、というよりも気付くことが出来ないサインを戯贈へと送った。
「過去に━━」
僕は、声のトーンを落とし、話を始めた。
脈絡もなく、ふいに、唐突に。
「ある一人の女の子が産まれた。五年間、子供に恵まれなかった夫婦の間に産まれた愛娘。両親は幸せだったろうな。自分達に似て、優秀で秀才で常人を超越する程の容姿を期待したんだ」
「何が言いたいの?」
「しかし、両親の思った通りに子供は育たなかった。そんな子供に対し、両親は憎しみを覚え始めた。そして、虐待。虐待を超えた侮蔑、区別、差別。暴力を振るい、虐げた。子供、その少女は自分を追い詰めた。何故、私は美しくないのか、何故、私は優秀ではないのか。少女は両親に虐げられようと、決して両親を恨んでいたりしなかった。ただ、純粋に綺麗になりたくて、ただ、単純に美しくありたくて」
「だから、何?」
作品名:サイコシリアル [3] 作家名:たし