サイコシリアル [3]
「それはもう、気持ち良いくらいの断末魔が響き渡ったわ。阿鼻叫喚の渦。私は愉快で堪らなくて、至福で狂い咲きそうで、見ていることしか出来なかったのだけれど」
やめてくれ。
「その時の戯贈さんの表情といったら最高よ。悲壮に満ちて、とても愚かだった。目の前で肉親がぐちゃぐちゃの肉塊に変わっていったんだもの。とても愉快よね」
お願いだから。
「相当なショックを受けたんでしょうね。戯贈さんは、それからというものの精神的疾患により、行動力を失った」
これ以上は。
「あの時の犯人は、とても華麗だったわ。人間の構造を知り尽くしているみたいに、綺麗に解体していく。あははは、勿論内臓は勝手に食べちゃったけど」
やめろ。
「愉快よね!両親殺されたくらいで! 馬鹿みたい! 本当に言葉もかけられない。惨めで無力で本当に脆弱。あ、そうそう。その時、戯贈さんの両親が何か叫んでいたわね、その犯人に向かって。裏切りがどうとか、一族がどうとか政府とか。ま、綺麗に死んだんだけどね。口を金魚みたいにパクパクさせながら」
いい加減、
「やめろぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
全部、分かったよ。
理解した。
何も言わなくていい。
僕の長所でもあり短所でもある理解力。要するに思考の速度。
分かってしまった。何故、戯贈が殺し屋になったのか。何を目的としているのか。
その先まで、大体のことは読めた。人間関係も。
「聞いていること以上のことを、べらべらぬかしやがって」
キレた。華麗なまでに完全に。
「何を熱くなってるのよ。あははは、笑っちゃうわ」
「いいか、霞ヶ窪。戯贈を食いたいなら食えばいい。けどな、それは僕を殺してからだ」
「勝手に決めないでよ。指図される意味が分からないわ」
「指図じゃねーよ。喧嘩売ってるんだ。所謂、挑発だよ」
「喧嘩? 挑発? あなたは愉快よね、本当に。凶器を持たない、人間が、凶器を持つ人間に挑むなんて馬鹿みたいだわ」
作品名:サイコシリアル [3] 作家名:たし