サイコシリアル [3]
とても、殺し屋・・・・・・遣い屋である暗器遣いには見えない。ただの普通のちょっと変わった女の子なのに。
なのに。
九紫の兄、戌亥は・・・・・・戌亥は。
妹にこんな思いをさせている。
そう思うと無性に腹が立つ。
自分勝手で不合理だけれど、腹が立つ。戯贈の両親を殺し、妹を悲しませている戌亥がとてつもなく憎い。
むしろ、今の僕は、戌亥が犯人であればいい、とさえ思っていた。
全力で殴れるから。
全力で蹴飛ばせるから。
人が人に殺される理由はないが、人が人を殺す理由はある、か。
だったら、今の僕には人を殺す理由があるのだろうか。
なぁ、顔も分からない、戌亥さん。
「枝苑は何も悪くないわ。そして、涙雫君ありがとう。私と九紫の為に怒ってくれてありがとう」
戯贈がいつになく、優しい口調で言った。さながら、怒りと悲しみを同時に慰めるような口調。
そこまで、表情に出ていたのだろうか・・・・・・逆に気を遣わせてしまって申し訳ない気分になった。
「ねぇ、涙雫君」
ふいに戯贈は僕の名前を呼んだ。
作品名:サイコシリアル [3] 作家名:たし