サイコシリアル [3]
「もし、九紫戌亥が私の両親殺しの犯人で。もし、私と涙雫君の前に現れたとして。そうしたら私、確実に冷静じゃいられなくなるわ。今は、まだ相対していないから平常を保てているのだけれど、相対したらそうはいられないわ。私の主義に反してしまうのだけれど、多分、確実に私は復讐に狂い、憎悪に叫び、悲しみに泣き、みっともない姿を曝け出すでしょうね。その時は守ってちょうだい。私を、心ごと守ってちょうだい。お願いしてもいいかしら」
馬鹿だな、戯贈は。
どんなに頭が良くても。
どんなに理論めいても。
どんなに固定概念に囚われていようと。
戯贈も女の子には変わりない。
王子様に守られたい、女の子。
僕は、王子様という柄じゃないけれど。
「当たり前だろ」
戯贈の王子様にはなれる気がする。
「心強いわね、涙雫君」
戯贈は、薄らと笑みを浮かべた。
「・・・・・・さてと、まずは行動だな」
戯贈のレアな表情が名残惜しい、明け方、四時過ぎ。
僕はそう言いつつ腰をあげた。
「何処へ行くんですか、涙雫先輩」
急に、立ちあがった僕の行動が訳が分からない、といった表情で九紫が僕に問いかけた。
「隔離病棟以外ないだろ」
僕は、そう断言した。
この後、未知なる恐怖と出会うことも知らずに。
作品名:サイコシリアル [3] 作家名:たし