サイコシリアル [3]
「そうです、それしかありません。なので私は調べました。聞き込みをしたり、資料を漁ったり。そして、一つのことがここで分かったのです。兄が消えた、その日に、兄を慕う殺し屋の一人、賽ノ目燐火さんも消えたことに」
九紫の兄が消えた日に、もう一人の殺し屋も消えた。
ならば、この殺し屋を兄が殺し、追放されたのだろうか。
しかし、これではしっくりこない。
引っ掛かる。
「消えた━━ということは、殺された訳ではない、ということか?」
そう、これだ。
殺されたではなく、消えた。文字通り、消えたのだ。
ということは、死体も痕跡も何もないということだ。
「はい、仰る通りです、涙雫先輩。さすがですね。私は、初めのうちは、賽ノ目さんが殺されたのだと思いましたよ」
僕は、九紫が消えたと表現していたから、この結論に至っただけで、大して凄くはない。
言葉の意味を考えれば容易なことだ。
「しかしですね、まだこの段階では戯贈先輩の両親殺しに関与していたとは、仮定出来ません。何通りとある可能性の一つです」
「それじゃ何故、仮定を出来るようになったんだ? 何かしらの材料があった訳だろ?」
「はい、たった一つだけですが、見つけました」
「何を見つけたの?」
今度は僕ではなく、戯贈が九紫を促した。
「それはですね、政府です。戯贈先輩の両親は、政府側の人間ということ。それも、奥深く、未知の領域にいる人間。戯贈先輩も知らなかったでしょう、この事実は」
「確かに私は両親の元職業は警察官だと認識していたわ」
「それは嘘だったんですよ、戯贈先輩。何故、実の娘に秘密にしていたのか分かりませんが、それは事実ではありません。ハッカーの知り合いに頼んだので間違いない情報だと思います」
ハッカーの知り合いがいるとは。それに政府側にパッキングするとは凄まじい腕前だ。情報殺し、情報遣いと言ったところか。
「それが、本当だとしましょう。けれど、それでも可能性は数パーセントでしょうね。もしくはそれ以下かもしれないわ」
戯贈が言った。
いや、待てよ。
また何かが引っ掛かる。その仮定が正しい確率を更に跳ね上げる何かがあるはずだ。この一連の流れの中にあるはずだ。
あったはずだ。
戯贈との会話から今までの流れ、僕は何を言った。
戯贈の両親が政府の中枢に位置する存在が事実だと仮定し、それに確定事項を加えればいいだけだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
そうか。
あったぞ。思い出した。
「戯贈。あったぞ。その数パーセントを十数パーセントにあげる事実が」
多分、これと繋ぎ合わせれば確実だ。
作品名:サイコシリアル [3] 作家名:たし