サイコシリアル [3]
「で、このタイミングで兄の話題を出したということは何かあるんだろ?」
このタイミングというよりも、その表情、その話し方から予測した解答なのだけれど。
「戯贈さんは、そのこと・・・・・・兄のことで私を呼んだんですよね?」
「そうよ、洗いざらい聞かせてもらうわ」
戯贈は、実に淡白に言った。何も知らないのに、何かを握っているような、そんな感じ。
「単刀直入に聞くわ。私の両親殺しと、あなたの兄、戌亥とやらが関係しているわね?」
本当に単刀直入だった。
「・・・・・・はい。ごめんなさい、黙っていて。ただ確信がなくて。仮定の段階で、もしかしたらっていう程度だったので。言い訳ですね。ごめんなさい」
なんて、素直な女の子なのだろう。
戸惑いもせずに、素直に、言いづらいことを相手に話す。これは、とても勇気のいる行動だと思う。
しかし、九紫と、全てを悟ったであろう、戯贈の話し方からすると、
「九紫の兄は、戯贈の両親殺し・・・・・・という訳か」
つまりはこういうことだろう。
最強の殺し屋、殺し遣いに殺されたのが戯贈の両親。
しかし、何故戯贈の両親が殺されたのだろうか。僕はそこに重大な何かが。まだ知ることのない重大な何かがあるような気がしてならない。
「はい」
九紫は、答え辛そうにしながらも、しっかりと芯の通った返事をした。曖昧に濁さずに断言をしたのだ。自分の兄が、戯贈の両親を殺したと。
「別に枝苑が悪いわけではないわ。あなたは何もしていないじゃない」
「でも、私は戯贈先輩に事実を隠していました」
「あなたは何処まで自虐的なの? あなたが隠していたのは、仮定でしょう? 根拠も確信もない仮定なんて、ただの妄想よ。それは私にとって、何も意味をなさない。それに、私は枝苑に教えてなんて頼んだこと一度もないのだから」
「でも・・・・・・」
「戯贈がこう言ってんだから、あんまり気負うなよ。老けるぞ」
「美少女が老けたら、美女になるので無問題ですね」
こういう時でも口だけは達者な九紫だった。
ま、こういう方が九紫らしいと言えばらしいから、良いのだろう。
戯贈も真剣な話をしている時は、嘘はつかない。冗談はつくけど嘘はつかないのだ。だから先程の話も嘘ではないのだろう。
「私は常に真剣よ。大真面目」
こいつらは緊張感って言葉を知らないのだろうか。先程までの半シリアスな会話は何処に行った。
「会話は行くものじゃなくて、変わるものですよ」
僕が、こいつらに何も期待するまい、と誓った瞬間でもあった。
作品名:サイコシリアル [3] 作家名:たし