サイコシリアル [3]
「戯贈先輩の話に捕捉させていただきますと、戯贈先輩が『巧』と呼ばれていたのは『巧遣い』という通称というか呼称のことですよ。私が暗器遣いと呼ばれるように、その道のプロ、またはプロを超えた異端という存在に認識されてしまうと自然と『○○遣い』と呼ばれるようになるんですよ。不思議と、昔からなんですけど・・・・・・というよりも・・・・・・」
そこで九紫は表情を雲らせた。悲しみ憂いとも取れる表情、しかし何かを思い出しているかのような。感情が混ざりあった複雑な表情。
そして、九紫は続けた。一言一言を噛みしめるように、絞り出すように、苦し紛れに。
続けた。
「私の兄・・・・・・九紫戌亥が始まりだと思います」
九紫には兄がいたのか。初耳だな。
九紫は三女なのだから兄がいてもおかしくないけれど。
それにしても、何故兄の話題を出すのに、そこまで悲痛な顔をする。
「私の兄は、九紫一族史上最高と謳われる程までに殺人スキルに長けていました。技術力云々だけの話ではなく、殺人という行為そのものの天性、と言うべきなのでしょう。私が暗器遣いと呼ばれるように、戯贈先輩が巧遣いと呼ばれるように、兄は殺しという行為を、すなわち殺し遣いと呼ばれるようになったのです」
殺し遣い。
殺しという行為を物にしたということだろうか。
さながら、息をするかのように人を殺す。
「よく口癖のように言ってましたよ。『人が人に殺される理由はないが、人が人を殺す理由は存在する』と」
なんて、自己中心的な考えなのだろう。
本当に骨の髄まで殺人に染まり、極めた者の言葉。
作品名:サイコシリアル [3] 作家名:たし