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サイコシリアル [3]

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 「これはですね、個人的に少し気に入っているんですけど、折り畳み式の仕込みナイフです。あぁ、何処に仕込んでいたのかというと、靴のソールの内部ですね。私の靴も黒色と仕込みナイフの色に合わせています。仕込み方と取り出し方、タイミングはですね、あっ、土足失礼しております」
 「知らねーよ!」
 確かに暗器を使用してほしいって思ったけど・・・・・・思ったけどさ。
 それほどまでに九紫の暗器の遣い方は、あまりにも一瞬で、華麗で、見惚れる暇もないものだった。
 「使用してほしいって願ったのは涙雫さんじゃないですか。他にも色々あるんですけどねー。革ベルトに見せた電気拘束具、アクセサリーも全て仕込みが入っていますし。というよりも、私の全身は暗器だらけですけどね。次は何を使ってほしいですか。そうですね、やっぱりベルト型電気拘束具ですかね。一瞬で世界から隔離されますよ、もしくはトリップ出来ますね」
 切実に勘弁してほしい。
 まだ僕は世界から隔離などされたくない。そして確実にトリップ状態すらも、集中治療室に向かう羽目になるだろう。
 「これで分かったでしょう、涙雫君。私は冗談を言ったまでで、嘘はついていないと」
 確かにそうだけど、九紫の行動は冗談になっていない気がする。
 そこで僕は不意に思い出した。初めて斬島と出会ったときに、彼が言っていたことを。
 「そういえばさ、戯贈。戯贈は斬島に『巧』のお嬢ちゃんと比喩されていたよな? 九紫の暗器遣いみたいに意味があるのか?」
 「本当に記憶力はあるのね、涙雫君。私はそういう略称はあまり好きではないのだけれど、言葉を巧に遣う、流れを巧に操る、から来ているみたいね」
 それで通称が『巧』な訳か。
 案外単純明快なんだな。
作品名:サイコシリアル [3] 作家名:たし