サイコシリアル [3]
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戯贈がそう言い切ったと同時に、僕の背後、所謂、部屋の窓方面からガチャッと何かが外れ、開く音がした。
要するに、窓が開かれたのであろう。
「どうも、遅くなってしまい申し訳ありません、お二方」
所謂、九紫が来たのだ。
にしても、タイミングがあまりにも絶妙すぎる。
「九紫、いつから屋根の上で張っていた」
「戯贈先輩が、涙雫先輩に『おはよう』といったあたりですかね。タイミングがなかなかなくて」
「要するに章の初めからだな」
「本当に待ちくたびれましたよ」
あまり突っ込みを入れると会話が長引く傾向にあるので、ここらで流そう。
そうしよう。
「ていうか、永世中立前線冠位第三位『暗』って何? 胡散臭くて信じられないんだけど。少しかっこいい気もするけど」
「あぁ、あれは冗談よ、涙雫君。中立に順位を付けたら中立じゃなくなるじゃない」
「変な嘘つくなよ!」
別にあそこは嘘をつくタイミングじゃなかったはずだ。
しかも、かなりらしい嘘をつきやがった。
「勘違いしないで、涙雫君。私は冗談は交えたけれども、嘘はついていないわ。紫苑が一族史上最高クラスの暗器遣い、という所は本当の話よ」
へー。
意外だな。なんか逆につまらないな。
いっそ僕に向かって暗器を使用してほしいものだ。
ガチャン。
そんな壊れた機器類が発する音とも、歯車がうまく噛み合った音とも取れる金属音が部屋に響いた。
首元に冷えた金属を突きつけられた感触に襲われた。というよりも、確実に刃物系の物が突きつけられている。
作品名:サイコシリアル [3] 作家名:たし