サイコシリアル [3]
「そう、材料。殺し屋の三つの組織、思想の集まり。この中にはね、一族と呼ばれる存在は九紫一族だけなのよ。一族揃って殺し屋を生業としているのはね。家族や個々人の組織内のグループはあっても、一族はいないのよ」
成程な、そういうことか。
でも、それだとまた一つの問題が浮上してくる。
「確かに組織内の中だけで言えばそうかもしれないけど、日本全体、いや、世界全体で見たら相当数の一族がいるだろ。それに依頼という可能性もある」
結局のところ僕は、九紫一族、いや、九紫枝苑を庇っているだけなのかもしれない。親しい彼女の属する一族が、戯贈の両親を殺した、という事実から目を背けたいだけなのかもしれない。
別に九紫自体が、戯贈の両親を殺したという訳ではないのだけれど、それでも気分は良くないのは確かだ。
もし友人の家族が殺人を犯してしまって、その友人に何て声をかけていいか分からなくなる、とかそういった類の気持ち悪さだ。
戯贈には、言い訳じみたことを言ってはいるが、結局解答が百点満点ではないところに、いくら仮定し考察しても、分からないものは分からないし、更に深く掘り下げてしまい、更に分からなくなり不安になるものだ。
「だから、もうそろそろ客人が来るわよ」
「え?」
戯贈の唐突な言葉に、僕は素っ頓狂な声をあげてしまった。
実に情けない。
「客人って?」
戯贈の予想外すぎる告知に、未だに僕の脳内は活性化しようとしない。
「決まっているじゃない。九紫一族の三女にして、一族史上最高クラスとまで謳われる暗器遣い、永世中立前線冠位第三位『暗』、九紫枝苑その人よ」
作品名:サイコシリアル [3] 作家名:たし