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サイコシリアル [3]

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「唐突で申し訳ないのだけれど、涙雫君」
戯贈の表情の切り替えは、とても顕著だった。照れデレ表情から無表情へ。
大したもんだ。
そういえば僕は、まだ戯贈の満面の笑みというものを見たことがない。
いつか見てみたいものだな。戯贈の満面の笑み。
一喜一憂でもいいから、見てみたいものだ。
その為には、トラウマという心の傷を少しでも埋めてあげなければならないのだけれど。
「ごめんなさい」
そんなことを考えていると、戯贈は唐突に謝ってきた。
「何に対して謝っているんだ?」
本気で分からない。ありがとう、ならともかくも、ごめんなさいと言われる覚えはない。
「謝罪の理由を問うのは、愚かだと思うけれど、説明すると、あなたに対する全てと言えばいいかしら?」
僕に対する全て?
どういう意味だろう。
「やっぱり涙雫君は、追い詰められないと理解力を発揮しないのね。俗に言う、火事場の馬鹿力が涙雫君の場合、思考の加速へと繋がっているのかしらね」
「悪かったな」
「いいのよ、別に。それも含めての一心同体なのだから。あなたに対する全てというのは、そのままの意味よ、涙雫君。私は一心同体と表現をしていながら、過去を隠していたのだから。だから今までの私は、私であって私じゃないようなものよ。涙雫君に過去を包み隠し、語ろうともせず、惨めにも隠し続けてきた。秘密がある、ということはそれはそれで、とても魅力を底上げすることに繋がるとも思うけれど、それは時と場合によっての話。つまりね、涙雫君。私は私の過去を、涙雫君がどういう形で知ろうとも、どういう風に受け入れようとも、結局はそれが私。過去も現在も交えてこその私なのよ」
そこまで話をし、戯贈は一区切りつけた。
つまり、過去を隠していた自分に劣等感を感じていたのだろう。
「言うのであれば、私は涙雫君を騙していたと言っても過言ではないのよ。それほどまでに、自分が歩んできた歴史、つまりは過去というものは大きいものよ。だから、ごめんなさい」
僕は少し気になっていただけであって、気にはしていなかったのに。
なんだかんだ、人間味に溢れていて、可愛いげのあるやつだな、戯贈は。
作品名:サイコシリアル [3] 作家名:たし