サイコシリアル [3]
部屋の照明は、暖色系の保安球しか機能してないので、はっきりと戯贈の表情を捉えることが出来ないのが残念無念な訳ではあるのだけれど、僕の予想からして戯贈は頬を少し赤らめて、俯き加減になっているであろう。
これも最近の分析による、絶対的な自信。僕だけが味わえる、唯一無二の表情。
少しばかり、大言壮語か。
自粛。
そこで僕は、デジタル時計の隣に置いてある、リモコンに手を伸ばし、スイッチを押した。
僕の部屋の電気のスイッチは、壁に設置しているのではなく、リモコン式なのだ。
かっこよく表現をすれば、遠隔操作。ただし、半径五メートル以内なのだけれど。
無論、部屋の明かりは最上級へと移り変わる。
そして、僕が捉えた戯贈は、というと。
まだ、照れていた。
「で、電気を消してくれるかしら。少しばかりの間だけでいいから」
いや、デレていた。
「デレてなんかいないわよ」
そして、思考はバレていた。
僕は名残惜しくも、掛け布団から抜け出し、ベッドに腰掛けた。
寝起きで掛け布団から抜け出す、という行為ほど名残惜しいことはないと思う。多分、万国共通であり、万人が体感しているであろう。
布団の魔力、恐るべし。
「で、何を言いたいんだよ、戯贈」
僕はこれまた、名残惜しくも、戯贈の照れとデレに対し差ほど反応を示さず話題を変えた。
というのも、照れとデレは、たまにくるからこその至高。という僕の持論から来るものである。
常に体感し、体験していれば人は何事にも慣れてしまうのだから。個人的には、掛け布団や三大欲求以外のほとんどに当てはまる。
作品名:サイコシリアル [3] 作家名:たし