サイコシリアル [3]
【殺し遣い・戌亥の場合】
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僕の予感は的中していたのかもしれない。予感というか、予想というか想像というか、曖昧だし根拠も自信もない確信。最低の結果ではなくとも最高の結果でもない。要は、捉え方の問題。何がどうしてこうなったか、はたまた、こうなったことを踏まえて今後はどうするか。結局は、個人個人の価値観の違いだ。
根拠のない理論を言わせてもらえば、第六感というやつだろうか。シックスセンス。
根拠のない予感。
そして、僕は『殺し屋』という存在をなめていたということだ。『殺し屋』という世界を『思想』という概念をなめていた。いや、決してなめていた訳ではない。ただ、分かった気になっていただけの浮かれた惨めな男だったのだ。
よくよく考えてもみてみれば、僕の接する殺し屋は、戯贈と九紫だけである。
二人は『永世中立』を思想とする殺し屋であり、良く言えば必要悪で、悪く言えば生粋の悪で。
だから、僕はまだ出会っていなかったのだ。良く言えば生粋の悪で、悪く言っても生粋の悪である殺し屋に。そして、本物の遣い屋に。
過去に出会った斬島も霞ヶ窪も、殺し屋ではなかったのだから。殺し、という不条理な行動を決して生業としている訳ではなかったのだから。
話を変えるけど、他人の過去を暴けば何かしらの事態に巻き込まれるのは、必然だろう。身近な一人の過去を暴けば、自ずと、その一人と身近な人の過去も暴くことに繋がる。僕は所詮第三者の立場だけれど、第三者の立場だからこその話もある。
結局は、戯贈の過去を暴いたことにより、知ってしまったことにより、九紫の過去をも知ってしまったのだ。
同時に二人の過去を知ってしまったのだ。
逃げることも出来ないし、目を逸らすことも出来ない。
というよりも、逃げたくない。
柄にもなく、この二人の為になんて考えてしまった。自然と思ってしまった。
一人は僕の頭で、一人は僕の友人なのだから、それは必然だ。
要するに、二人の過去に巻き込まれた、のではなく、巻き込まれに行ったという表現が正しいのだろう。
もはや何を言っているか、分からなくなりつつあるので、物語を語らせてもらうとしよう。
とても残虐で不条理で温かくもある、物語を。
作品名:サイコシリアル [3] 作家名:たし