眠れない夜を越えて
携帯に覚えさせておいた地図を頼りに、昨日の場所にたどり着いた。
「今晩は」
公園の真ん中に男の人が立っていた。
私が置き去りにして帰った黒いコートを着ている。
「・・・・こんばんは」
「・・・」
「あの、コート・・・」
「猫が好きなの?」
「ええ、まあ・・・」
「そう」
帰ろう。
ここは私の居場所じゃなかった。
この人の場所だった。
「にゃあ」
昨日と同じ様に、ベンチに三毛猫が現れる。
男の人は、公園の真ん中からこちらに歩いてきた。そこへ、昨日と同じ様にたくさんの猫が集まって、丸まって、眠る準備をしていた。
「まだ夜は寒いから気をつけて」
通り過ぎながら、ぽんっと肩を叩かれる。
「え・・・」
「おやすみなさい」
作品名:眠れない夜を越えて 作家名:ゆまり