眠れない夜を越えて
「にゃあ~」
三毛猫が鳴くと、茂みから次々と猫が出てきた。
5匹、10匹、20匹、30匹…
猫たちは集まり、丸まって、1枚のふわふわの絵のようになった。そうやって寒い夜をやりすごしているのだろう。
私一人ぐらい居たところで、猫達の眼中にもはいらないんだ。人間の生活だけじゃない。猫の世界を見られた気がして嬉しかった。
私は側にいた子猫をそっと押し、その絵に加わるように勧めた。
「あっちの方があったかいよ」
出来るだけ小さな声で話しかけた。
私も猫達に寄り添って眠ろうかと思った。
でもすぐに考え直し、座っていたベンチに横になった。
ゆっくり上下するたくさんの背中を眺めて、目を閉じる。
こんな夜なら嫌いじゃない。
目を閉じて、真っ暗になっても、穏やかな気持ちで居られた。
余計な考えも浮かんでこないし、この場から逃げ出したくもならない。
目覚まし代わりの携帯を両手で握って眠った。
作品名:眠れない夜を越えて 作家名:ゆまり