眠れない夜を越えて
また夜が来て、家を出た。
いつものように細い道ばかりを選んで歩いた。
こうすると、誰にも見つからない場所に行ける。
何度も角を曲がり、住宅街を抜けて、人通りが完全に無くなるまで歩く。
外灯もなくなり、月も雲に隠れてしまった。
私は携帯の明かりで照らしながら歩いた。
もう自分がどこまで来ているのか、
どこにいるのかわからない。
その感覚の狂いが好きだった。
さらに進むと遠くに明かりが見えて来た。
電気の消えた10階て程度の廃ビルが外灯に照らされている。
近くまで行ってみると廃ビルだった。壁ははがれ、ガラスが割れている。四方を廃ビルに囲まれた真ん中に公園があった。
弱い光が芝生に向かい合わせに置かれた4つベンチとそれを囲む木々を照らしている。
「にゃあ」
大きな三毛猫がいた。
猫はひらりとベンチに乗り、私に黄色い瞳を光らせている。
その時、柔らかいものが足に触れ、見下ろすと黒い子猫だった。
何度も何度も体を擦り付けてくる。
撫でてやると気持ちよさそうに目を細めた。
三 毛猫をじっとみながら、向かいのベンチに腰掛ける。子猫も付いて来て、私の隣 にぴったりよりそった。猫になつかれるのは気分がいい。やわらかい毛がほっと させてくれる。
私は夜をここ過ごす事に決めた。
作品名:眠れない夜を越えて 作家名:ゆまり