D.o.A. ep.8~16
「…罠」
ティルバルトは彼女の腕を掴んで、自分の方へ近付ける。
大したことはないその傷をしばらく観察していたが、やがて目を瞠った。
「毒針の罠か!」
「ど、毒!?」
三者の顔が青ざめる。リノンに至っては血の気が引いていた。
「な、なんで、そんなのが」
「そんなことより手当てを…これ、使ってください」
ロロナが取り出したハンカチを、ライルがきつく縛りつける。
「こ、これからどうする?とりあえず近くの町まで戻って」
彼女の体から急に、がくんと力が抜ける。
毒が回り始めたらしく、心なしか顔色も悪いうえ、小刻みに震えだしていた。
「対魔物の強毒だ。…そんなに、もたない」
「!…そんな」
「ティルバルトさん!なんとかならないんですか?」
「なんとか…か」
珍しく、さすがにうろたえている。彼に従って歩いて、罠にかかったのだ。責任も感じているらしかった。
近くで、ガサリ、と物音がしたのはそんな時だった。
「そこにいるのは誰だ!」
木々の間から鋭い、警戒を含んだ叫びが飛ぶ。どうやら人の言葉を話せる、獣でも魔物でもないようだ。
音を立てて姿を見せたのは、
「ティル?そこにいるのはティルか?」
「な、なぜ」
「罠が反応したから…お前こそなんでこんなところへ…」
ティルバルトを知るらしい2人。
その長い耳は、彼と同じ、エルフ族のものだった。
作品名:D.o.A. ep.8~16 作家名:har