D.o.A. ep.8~16
「そう、それなの!」
ユーラムは彼にびしっと指を突きつけると、
「ヴァリメタルの特性っていうのは、 “魔物”に対する、マイナスの効果なのよ。
少なくとも洞窟から半径3キロほどには魔物がいっさい寄り付けない。
トータスに生息する魔物の凶暴性が、他大陸と比べて低いのも、一説にはこれが放つ波動のおかげらしいわ。
でも確かに、あなたたちからの報告書によれば、ここ最近の魔物は凶暴性を増しているし、数も増えてる。
目撃者の言うことを信じるなら、その洞窟が原因だと考えられるわね」
確かに思い返してみればそうかも知れぬ。
こうしてこの部隊で巡回を始めてから結構な日数がたつが、最初の頃の相手はそこらの野生動物に毛が生えた程度だった。
第一、魔物との戦闘自体が少なく、それはこうしてヴァリメタルのおかげだったと判明したが、最近はならず者とより、明らかに魔物との戦闘回数が増えている。
「あのう…それで、あたしたち、けっきょく何をすれば…」
ロロナがためらいがちに、小さく手を上げた。
「あなたたちには洞窟へ入って、中の様子を探ってきてもらうわ」
「さっき、入れないって聞いたばっかなんだけど」
ライルが半眼で反論すると、ユーラムはフッと笑った。
「あくまで素人にとっては、よ。あなたたち、並以上に戦えるでしょ?」
「そうだけど…」
「大丈夫よ、そんなに固くならなくたって。別に最深部へ行って原因を究明してこいってんじゃないのよ。
入って何か異変があったら、それを報告すればいいの。後日もっと大きい部隊をやるつもりだから。ま、斥候って感じ?」
「いや、そもそも魔物が出ること自体が異変だろ」
確かに、ユーラムの言葉によって、それまでの緊張が若干和らいだのは事実だ。
ライルは、ヴァリメタルの写真を見つめながら、そう言えばなぜティルバルトは知っていたのだろう、と気付いた。
作品名:D.o.A. ep.8~16 作家名:har