D.o.A. ep.8~16
Ep.9 誘
その日、ヘクト=レフィリー軍曹は仕事を休んだ。
集合場所の、軍部に入ってすぐに見える、巨大な観葉植物の前に、いつも一番早く来ている彼の姿はなかった。
祖父が危篤である、そんな彼の言葉を思い出し、とうとうお亡くなりになったんだな、と、顔も知らぬ老人の死を悼んでみる。黙祷。
宿舎入りを果たしたリノンだが、枕が違うとかで寝つきが良くないらしく、集合時間の7時ちょっと前にあくびをして走ってくる。
今は6時40分過ぎなので、彼女が来るのはもう少し先になるだろう。
ロロナはヘクトの次か、同時くらいにやってくるという。ライルはいまだ、集合場所ですでに待っている彼女の姿しか見たことがない。
いつも早いな、と感心すると、でもなかなか起きられなくて目覚まし時計を3つも用意してるんですよ、そう照れながら笑った。
このとき彼は、最初に抱いた印象を撤回せざるを得なかった。影が薄い地味女などととんでもない、派手ではないけれど、笑うととても可愛いのだ。
同い年くらいだと思っていたら、なんと5つも年上だった。
そして最後に、寸分違わず7時ちょうどにやってくるのがティルバルトだ。
遅刻ではないので、彼を責める理由はない。彼のような男に、最後にやってきたからと、申し訳なさを見せる殊勝さを期待するつもりもない。
しかしだ。挨拶くらいはしても罰は当たるまいと思う。
集合時刻よりも早めに来ることと、挨拶をしっかりすることが社会人としての常識だと、ソードも言っていたし、
どんなに腕が立ってもこいつはまだまだだ、とライルは結論付けている。
だが、今日、最後に現れたのはティルバルトではなかった。
作品名:D.o.A. ep.8~16 作家名:har