D.o.A. ep.8~16
Ep.15 魔
背後に誰かが立った。
けれど振り向いて確かめる気すら起きない。そして、確かめるまでもないひとだと知っていた。
――――本当は気付いていたろう?
(……)
――――なぜお前だけが生き残れた? あの夜、いったい誰があの場に割って入ってお前を助けられたというの。
(……それは)
――――おかしいと感じた事は何度もあったはずだ。
(……うん…)
――――しかし、その先へと進もうとはしなかった。いつも抱えた疑問を中途半端で投げ出して、やがて立ち消えさせた。
(……ああ、いつも、そうだった、な)
――――怖かったからだ。思い出せないものが触れてはならないものだと、無意識に忌避した。
聴覚とは違うところに響いてくる声が、少年に問いかける。
けれどもそれは、少年からの答えなど求めてはいない。勝手に、少年の内に秘めたるものを暴き語る。
――――今はまだ、忘れていいよ。だが、なあ。いつか、全部を知って受け止めてくれ。
(……ぜんぶ、を)
――――どれほど足掻いても、ずっと「今日(平穏)」が続かないこと、痛いほどわかっているんだろう。
そして、意識は再び、落ちていった。
黒い蔦が絡んで、引きずり込まれるように―――闇の底へと。
作品名:D.o.A. ep.8~16 作家名:har