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D.o.A. ep.8~16

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(……いる)

この先、そう遠くない場所に、明らかに魔物とは桁の違う強さを持った、何者かが。
ヴァリメタルの赤い光を頼りに、残り少なくなった魔物どもを片付けながら、トリキアスは、そう感じ取る。
群れる魔物は、いくら凶暴性を増そうとさほどの脅威に値しない。
ただただ牙と爪をいたずらに揮うばかりの畜生どもを、どれほど屠ってみたところで、「戦い」というより、「駆除」というのが適当であろう。
それも嫌いではないが、本当に彼が求めるところはそんな作業じみた殺戮ではない。
満足などしうるはずもなかった。
そうして、最後の一匹を片付けたとき、ふと背後から近づいてくるもう一方に意識を向けた。
まず、この闇に慣れた目にはつらい、光の玉が目に入る。そして、二人ぶんの足音。
黒髪の少年と、薄水色の髪の青年。トリキアスの姿を認めると、前者は目を見開いて駆け寄ってくる。

「やっと追いついた…!」
「…まだいらしたのですか」
「当たり前だ。ここは俺たち24班の担当区域だぞ。放って帰るわけにいくもんか」

少々うんざりした色を声に含ませるが、ライルは平然と返す。
殺し屋らしいということを取っ払って見てもなお、彼は堅気とは遥か遠く彼方の見かけである。
何をやらかすか知れないと疑わざるをえぬのも仕方があるまい。

「どこまでついて来られる腹づもりで?」
「行くところ、どこまでも」
きっぱり断言して、ライルはじっと彼の目を見つめると、底冷えするような冷たさをはらんで、赤いそれが一瞬、細まる。
思わず一歩退きそうになるが、ここで退いては負けだ、と根拠もなく信じ堪えて、そのまま数秒。

「……くれぐれも邪魔だけはなさらぬよう」
根負けというより、これ以上ライルの相手をするのが面倒になったのだろう。
「なさったら、命は保障いたしかねますので、そのおつもりで」
いっそう低く脅しをかけてきた。
否、脅しなどではない。ライルやティルを殺して困ることなど、おそらく彼にはなにもないのだ。
真剣にわかった、と深くうなずく。物騒なことを言いながら微笑んでいるのが、余計に空恐ろしい。
彼は、奥へと目線をやる。

「―――もうすぐ、なのでね」

そして、まだ見ぬ洞窟の奥底にて待つ強者を思い描きながら、期待をにじませてつぶやいた。



作品名:D.o.A. ep.8~16 作家名:har