D.o.A. ep.8~16
「みんな、聞いてもらいたいことがある」
巡回も滞りなく終わって、一息ついていたところ、ヘクトはいつもよりどこか気落ちした面持ちで告げた。
水分補給をしていたライルは、口を離す。リノンとロロナは、おしゃべりをやめる。ティルバルトは弓の手入れを止めず、目だけ向けた。
「じつは、俺の祖父が危篤なのだ」
「…それは…、なんと言ったらいいのか」
「近いうちに、葬儀があるだろう。俺の家はしきたりで、葬儀から数日仕事ができない」
厳格に育てられたといつか話していた。レフィリー家はかなりの家柄だ。そして、祖父が当主だという。葬儀の規模もさぞ大きかろう。
「じゃあ、その…数日間、班長抜きで仕事をすることに…?」
ロロナが不安げに口にする。
「そういうことだ」
ヘクトは首肯して、少し辛そうに目を瞑った。
ライルとティルバルトの喧嘩、と呼ぶにはかなり一方的なものを、公平な立場で仲裁できるのはヘクトだけだ。故に心配なのだろう。
リノンだと十中八九ライルの味方についてしまうし、気の弱いロロナに仲裁役などまず無理であるから。
「せいぜい仲違いをしないよう、頼む。帰ってきて最初の仕事が班の雰囲気の調整なんて羽目にしないでくれよ」
それでも期待できなさそうに空笑いをして、ライルとティルバルトを交互に見遣っていた。
作品名:D.o.A. ep.8~16 作家名:har