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D.o.A. ep.8~16

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唐突にライルは、あることに気付いていた。
ヴァリメタル。この名前は、このエルフの村「ヴァリム」にちなんでつけられたのではないだろうか。

と、こんなどうでもいいことに思考を費やしているのも、ひとえにヒマゆえである。
話し相手もおらず、かといってエルフ族から奇異の目を向けられるのを承知で近付いていこうとも思えない。
ティル―――と呼ぶことにした―――は、愛称呼びを容認し、すぐどこかへ行ってしまった。
雑談をするには、まだ好感度が足りないらしい。結果、こうして人目につかぬところで一人遊びをしているしかなかった。
リノンの解毒が終われば、こんな居心地の悪い里とは早くおさらばしたい。
エルフも、ヒトの中にいるとき、こんな感じなのだろうか。

それからしばらく経って、薬師の家の戸が開いた。出てきたのはロロナ。
「解毒終わった?」
「はい。…でも、リノンさん、眠ってます。睡眠が必要らしいんです」
対魔物用の強烈な毒をくらったのだ。確かに、解毒したからといってすぐに動かせないのは納得がいく。
「睡眠って、どのくらい」
「多く見積もって、7、8時間…くらい」
「待ってたら日が暮れるな」
割って入る声。戻ってきたティルだ。

「リノンをここにあずけて、洞窟へ行くってのはどうかな」
「珍しく建設的な意見だ。賛同しよう」
エッラそーに、と内心で悪態をついてみるが、結局賛同してもらえて嬉しいのだった。
「じゃあ、薬師のおばあさんに伝えてきます」
「いや、ロロナはここにいて」
「どうしてですか?」
「リノンがもし目覚めたら、心細いと思うから」
目覚めて一人ならば、彼女はすぐさま起き上がって出て行こうとするだろう。そして、一人であの視線にさらされるのだ。
それに比べ、ロロナがいたらどれほど安心するか、と考える。
「ライルさん…本当に、リノンさんが好きなんですね」
「はは、まあーね」
照れくさそうに笑って、それに、と付け加える。
「洞窟へ入っておかしいところ見つけて帰るだけなんて、二人でじゅうぶんだし」
ティルに目配せをする。肯定はしないが否定もしない。おおかた、別に俺一人でも結構、くらいに思っているのだろう。

「そ、そうですか。じゃあお気をつけて」
「うん。任せた」
「ハイ、任されました」
少しかしこまったように両肩をすくめさせ、ロロナはほんわかする笑顔を見せた。



作品名:D.o.A. ep.8~16 作家名:har