夢と現の境にて◆弐
「い、いや…だっ」
助けてと周りの見えない中、追い払うように手を振り回すと「大人しくしろよ…」と苛付いたような声が響き、いきなり股間のものを掴まれ弄ばれた。俺は何が起こっているのかわからなくて、自分から漏れる「あぁ」とか「うぅ」とかいう言葉が痛みのためかそれともまた別の感情で出されているのかも考えられずにいた。嘘だ、嘘だと頭の中で言葉が鳴り響く中、俺は恐怖と訳の分からぬ刺激とに何も出来ずにただ、喘いでいた。
涙が零れた。それでも相手は休むことなく自分を触り、弄び、楽しんでいる。ああ、あの悪夢と一緒だ。これは終わらないんだ。どれだけ助けを呼んでも、叫んでも、泣いても。誰も助けてはくれないのだ。俺が力尽きるまで、相手が満足するまで、俺はこれから解放されない。
俺はそんな考えに囚われれば、もう既に抵抗することさえ止めていた。
もう、いい。もういいんだ。勝手にすればいい。
俺は目を閉じた。誰も、誰も俺の考えなんて気持ちなんて、思ってはくれない。感じてもくれない。好きなように利用して、用がなくなれば捨てられる。そんな、ちっぽけなものでしかないんだ。
ぐっと、突然着物を引っ張られて上半身が晒された。そして荒い息遣いが近づいてきたかと思えば生暖かいものが俺の身体を沿っていく。舐められている。そう気づいたとき、全身が粟立った。気持ちが悪い。そう思えば止まっていた涙がどっと溢れてきた
早く終わってくれ、と思ったのと同時に、いやだいやだと相手が行為を進めていくにつれ俺はこれから逃れたい衝動に駆られた。
助けて欲しい…。助けて、たすけてたすけていやだ…
「ま…み、や」
そうあいつの名前を口にした時、俺は誰かの声を聞いた。