小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

夢と現の境にて◆弐

INDEX|8ページ/13ページ|

次のページ前のページ
 



その日の夕方、ばあさまと千代が月に一度の千代の家への訪問のため家の留守番を頼まれた。いつもこの時間に出かけるのは千代の両親が仕事のためいないからだ。ばあさまは一人娘のために休むぐらいしてやらんとはな、と憎憎しげに呟いていつも家を出て行っていた。

俺はそれを見送りながらそうなのか、な。とあまりその意見には口出しせずにいた。千代は可哀想だとは思うが、はっきりとその気持ちを俺が知ることはまず、ないだろう。
少し暗い気持ちになりつつも、どうせ暇だからと家庭教師を呼ぶことにした。いつも来てくれているのは大学生の人でよく話しかけてくれる陽気な人だ。口下手な俺でも気軽に話せる相手だった。携帯で連絡をいれ、夜の7時くらいに来てくれた。

「こんばんはー、狭霧君元気だった?」
「はい、御陰様で」

俺が笑って言い返すと相手――野本さんは驚いたような顔をして俺を見た。何だ?

「どうかしました?」
「…え?いやいや、あんまりにも良い笑顔だったんでね」

そう笑って客間へと入っていく。やはり俺の体調は日に日によくなっているんだな、と佐々部さんに言われたことを思い出しながら嬉しく思った。
いつも通り台所から麦茶を持ってきて勉強を開始した。最初は数学の問題の公式を再確認して幾つか問題を出してもらった。何問か解いていくとやっぱ覚えるのはやいねーと苦笑しながら野本さんが丸をつけていく。記憶力は警察に協力し始めてから覚えることが多くなっていた為自然と身についていた。理解力までは補えないが、これもそのためにやっているんだよなと自分の考えを改めた。

「そういえばさ」
「はい?」
「狭霧君、彼女できた?」
「…はい!?」

突然問われた言葉に声が裏返った。

「な、なんでですか?いないですよ」
「いやー、なんか随分と明るくなった気がしてさ」

俺をじーっと見つめながら野本さんが言う。少し居た堪れないような気持ちになりながら俺は俯く。

「それともなんか良いことあったとか?」
「え…、いやー、それは」

言い逃れはできない。これは逃げるしかないと思い、そろそろ英語教えてもらっていいですか?と切り出す。いいよ、と言われ辞書を取ってきますとその場を逃げる。危ない、危ない。ああやって詰め寄られたりしてしまうとばあさまと約束したことを守るのが難しくなってくる。そうなると大体こうやって逃げるのだが、果たして戻った後も聞かれてしまうのだろうかと内心ビクビクしながら俺は辞書を手にし、客間へと重たい気持ちを抱えながら戻っていった。

野本さんは、おかえりといってそのまま英文の訳し方など簡単に説明してくれた。そしてテストで出そうなところなどをマークして何問かの問題を出す。よかった、いつも通りだ。俺は安心しながら、手元に置いてあった麦茶を飲み干すと問題を解き始めた。野本さんは教科書をパラパラと捲りながら不意に思い出したように顔を上げて時計を見た。なんだろう、何か用事があるのだろうか。俺がそう尋ねようと口を開けたとき、「ねぇ」と野本さんが喋り出した。

「はい?」
「狭霧君はさ、いつも一人でするときどうしてるの?」
「…えっと?」

するとき…とは勉強のことだろうか。俺が困惑していると野本さんは笑って「勉強じゃないよ」と付け足した。じゃあなんだ、するときって。俺は頭を巡らせて一つの答えが出てきたがまさかな、と消そうとした、がその瞬間それを見越していたかのように野本さんが「オナニーのことだよ」と直球に言ってきた。

「え…なんで、ですか」
「いや?見たところ男一人みたいだから、そこら辺は大丈夫なのかなって心配になって」
「は…はぁ」

こ、これは俺のことを思っていっていることなんだよな…?と混乱しながらも思い直す。考えてみれば学校でも男がこういう話をしているのを聞いたことがあるようなないような…。おかしいことではない…よな?一般人が日常会話で話す内容をあまり深く理解していないため俺はどうしたらいいのかわからない。どうしようかと考えすぎていると身体が熱くなってきた。やばいな、落ち着かないと。

しかしおかしなことにそれは全く収まらない。反対にどんどん悪化していくばかりだ。息もしづらくなってきた。なんだ?何が起こってるんだ?風邪でもひいたのか?でもさっきまで別に何も異常は…

すぐ傍でクスリと笑うのが聞こえた。震え始めてきた身体を押さえながら俺が顔を上げると野本さんが不思議そうな顔で「あれ?」と首を傾げる

「…どうしたの狭霧君、顔、赤いよ?」

やっぱり風邪なのだろうか。俺が応えずにいると野本さんが此方に寄ってきた。俺の額に手を当てた後「うーん」と難しそうな顔をする。

「ちょっとあるみたいだね…。今日はもう寝たほうがいいよ。」

そういって野本さんは俺の脇の下に手をいれ立ち上がらせようとした。身体が少し持ち上げられる。かと思うと間宮さんの膝が突然俺の股間に当たった

「あっ」

思わず出た声にすぐさま手で口を覆った。なんだ、今の。それになんか、どうして身体がこんな状態になってるんだ…?特に下半身の異常な状態に俺は呆然とした。なんで、どうしてと俺が困惑していると野本さんがその状態に気づいたのか苦笑しながら尋ねる

「もしかして…溜まってるの?」

いや、そんなんじゃないと俺は首を振った。こんなことも今まで一度もなかった。俺はそう思いながらもこの状態で野本さんの前にいるのが嫌になってきた。できれば一人になって落ち着くのを待ちたい。俺は意を決して、「今日は、もういいです」といって帰ってもらおうとした。しかし野本さんはこんな状態で一人にできないよ、といって引き下がらない。いいから一人にさせて下さいと必死に訴えると、野本さんの態度が変わった。いきなり立ち上がったかと思ったら部屋の電気を消す。訳が分からずその様子をみていると、真っ暗な部屋の中でゆっくりと野本さんの近づいてくる気配がした。それは…

まるでなにか獲物を狙っているライオンの様で…

俺はいつの間にかこの状況と自分のみる悪夢とを重ねてしまっていた。

怖い、怖い、いやだ…

恐怖感が思考を覆い尽くす。俺は動くことさえ間々ならなくなっている身体を必死に動かし逃げようと部屋の隅へと動く。が、途中で力強く手首を掴まれ畳へと押し付けられた


作品名:夢と現の境にて◆弐 作家名:織嗚八束