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夢と現の境にて◆弐

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そして、そこで漸く夢が覚めた。いつも見ていた予知夢より随分と長く、心身ともに疲労した。話を聞き終わった二人は俺の話が終わっても話を聞き始めている時から変わらない表情で黙りこくっていた。俺が首を傾げていると、佐々部さんがやっと「そうか…」と溜息と一緒に言葉を吐いた。

「そうなると…自体は大変なことになるな。」

頭を掻きながら思いつめたように喋り出す

「これは高速道路に乗られてしまったら手が出しにくくなる。こちらの管轄から外れてしまったらもう終わりだと思ってもいい。それに道路を塞ごうにもそこまでの権限も与えられてない。…てことはだ、早急に見つけて対処するしかなくなる」

虱潰しだな…と眉間に皺をよせる佐々部さんを見て俺はヘコんだ。俺の夢は中々詳細まで見れているといわれたが、流石に時間帯や日付までは分からない。見てから大体一週間以内だとは検討はついているが…。それは今日か、明日か、もしくはもっと後なのかわからない。

これは今に始まったことではないが、ここまでわかっておきながらそれが分からなかったことで救われなかった命があると思うと悔しい。折角分かっていたのに、なぜ救えなかったのか。それを警察の人へ言ったことはなかった、むしろ謝られたこともあったけれど…限度があるのは充分承知の上だった。もっと効率的に進められればな、と思いながらも佐々部さんにその場所の特徴を聞かれた。地域や街など管轄内の写真や資料などを見ているので探せば大体どこだったかは分かるはずだ。俺はさまざまな写真から見覚えのあるものを取り出していくと、それはここの地域から10キロほど離れた街だと分かった。一番人口の多いところだ、夢で見るのも珍しくない。

場所も、どこから高速へ乗るのかも確認が取れた後、さてどのようにして高速に乗る前に捕まえればいいだろうかという話に移った。まずはスピード違反として追うことはできる。いざ捕まえたときも夢で見た様子からして薬物や飲酒の可能性も在り得るため逮捕の可能性も高い。しかし、この男は金持ちの息子だ。前に捕まったときも金の力で随分早く出てきてしまっている。また同じ事を繰り返す羽目になるかもしれないが…今は危機迫る命の方が大事だ。

地図を見ながらの計画が始まった。
結構入り組んだ路地や住宅がそこから近くに多く、今の総力では抑えられないかもしれないと困った顔で佐々部さんが言った。今はまだ警察の中で俺を信じてない人も多い。それもそうか、と納得しているのだが。今思えば本当によく警察が協力してくれているものだとこちらの方が信じられないくらいなのだ。贅沢は言っていられない。

「ここ」

急に横から手が伸びた。間宮だ。

「一昨日くらいから工事してます。多分まだかかる。高速手前くらいから進路を誘導してここに誘い込めば」

いけると思います、とそこで静かな声は止まる。指を指された地図のある道を見つめながら俺と佐々部さんが本当か?という顔で訪ねると間宮は頷いた。

「丁度横道も少なくて視界が阻まれるところです。曲がるまで工事してるなんて分からないでしょう。工事中とかの看板を外してもらってそこで何人か待機するといいかもしれません」

そういわれて地図を見てみるとなるほど、いった通りだった。しかしなぜそんなこと知ってるんだと俺が聞くと今度バイクの免許とるから道教えられてる、と言われた。誰に?とは一応聞かなかった。

早速佐々部さんが確認を取るとその通りだったらしい。工事は丁度一週間続く。これならいつでも準備満タンで迎えられるかもしれない。

その他住民の注意と工事の人への説明と承諾、あとはどの様にして何台の車でそこまで誘い込むか、と色々と話し合う中で一番的確な答えを出すのは決まって間宮だった。理由も頷けるものしかなく、作戦が整った頃には之で失敗するはずがない、というものができあがっていた。

「今回、絶対被害ださずに捕まえてみせるからね!」
「はい、期待しています」

そう送り出すときも、佐々部さんは活き活きとした様子で帰っていった。自分もなんだか意気揚々としている。こんなに自信のある事件前の自分なんて今までいただろうか?確実といっていいほど初めてだった。ずっと不安でしかたなかった。どうか失敗しても最小限で済みますように、上手くいきますように、誰もしにませんように、とそればかり考えていた。しかし、今はそんなもの微塵も感じられないのだ。それも、全て

この男のおかげなのだろうかと、チラリと隣に立つ間宮を横目で見上げた。

作品名:夢と現の境にて◆弐 作家名:織嗚八束