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ばーさーかー・ぷりんせす!第3話

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第三話 渚の可能姉妹 <後編>


6.

「わーん、助けてラッキー!」
ゴーザの口車に乗せられ、人気の無い港にマリアを連れ出したラッキー。二人は簡
単にマーフォークに囚われてしまった。

「どういうつもりだよお姉様! あんたマーフォークの仲間か? まさか、メロ
ディちゃんも…」
メロディは顔を伏せたまま。ゴーザは冷笑した。
「当たり前さぁ。お前達クズどもは私が力をつける為の、エサそのものなんだよ。
村人も、お前も、このメロディもね!」

 シャアッ
黒髪が波打ち、蛇のように鎌首を上げた。所々に金に光る目らしいものが見える。
彼女の正体は高い知能を持ち魔法も操る魔族、ゴーゴンであった。
「ぎえええ! へ、蛇女? 美しくない~アンラッキ~~」
「ラッキー、本能のままに生きたいなら協力するんだねぇ。メロディとつがいで飼
ってもいいわ。はっはははぁ!」
 高笑いする妖女ゴーゴン。

絶体絶命!

 その時。涼やかな声が漁港に響く。
「マリアをお離しなさい! 悪しき魂の輩よ」
「ギヒャヒャ、やっとオレ様の出番か?」
港に駆けつけたのはフロリーナたちだった。
「ギョギョ?」
「…お早い到着だね」
様子がおかしいラッキーをギャリソンが察し、後をつけていたのだ。姫は魔鎧をす
でに着ている。
「動いたら小娘は魚どもの餌だよ。…まあ、もうすぐ動けなくなるけどねえ。こっ
ちを見なッ」

 ギン!
ゴーゴンの瞳が金色に輝く。フロリーナ、ギャリソン、ルーシーの足が止まった。
いや、白く高質化している。石化妖術…フロリーナは驚きを隠せない。
「そんな…嘘ですわ。なぜゴーゴンが?」
彼女を驚かせたのは、石化されたことよりもゴーゴンという『高階級魔族の存在』
である。


 * * * * *


――人界と魔界、侵攻が終わったのは初代女王と魔鎧の活躍が大きいが、恒久的な不
可侵条約が取り決められたのは天界の関与があったからである。
時の天使長ティアと魔王ゼルは、天界魔界の壁を乗り越え、互いを慈しみ愛し合う
仲であった。彼等の活躍で魔界の一方的な人間界の侵略は阻まれた。
階級の高い魔族は地上への往来を禁じられ、それを破れば天界により裁きを受ける。
それでも魔族が刃向かうようであれば、天魔大戦、つまりハルマゲドンとなる。三
界崩壊もあり得る事態はさすがにリスクが大きい為、魔界の反乱分子も条約を飲む
しかなったのである。

 以前からいた雑魚の魔族…オークやゴブリン、マーフォーク等は未だ人間界には
びこり、大戦前からいた亜人も人間とは隔絶された場所に暮らしている。
しかし、強大な妖術を駆使するゴーゴンは何故此処にいるのか?


 * * * * *


「あら、私は人間さ。古代魔術で魔界の力を吸収し、変身しただけのねぇ。」
しゅうしゅうと唸り、先の割れた舌をくねらせてゴーザ=ゴーゴンが言った。
「驚きましたな。変身の魔術は聞いたことがありますが、高位転生など禁断のまた
禁断。」
ギャリソンもほぼ固まったまま感心した。石化しても違和感がない立ち姿だ。
「村の馬鹿どもは明日が大漁、しかも魚人の来ない日って占いを信じている。そこ
をマーフォークどもが漁をするわけ。魚人に貢いで魔力をわけてもらう話はついて
るのさ。さらなる高級魔族へ転生するためにね! 私はもっともっと力が欲しいん
だ…あんたら邪魔な存在には消えてもらうよ。しゃあっ」

「マーフォークが大人しい、と思ったら、あなたが操っていたんですね?」
哄笑するゴーザ。
「助けが来るなんて期待しないことだね。漁師のやつらは骨抜きさあ、今日は家で
皆ガタガタ震えてるだろうさ。」
捉えられたラッキーはメロディに向かい叫んだ。
「メロディちゃん、君もあのゴーゴンと一緒なのかぁ? メデューサだったり…い
や、それより君もオイラをだましてたのかよ!」
「…許して。ゴーザ様にはさからえないわ。私の仲間もマーフォークに狙われてい
るの」
彼女はうつむいたままだ。
「…そっかあ。わかったよ、んじゃオイラもゴーザ様の部下になるわ。魚のオッサ
ン、手を緩めてよ」
簡単に仲間を見捨てるそぶりのラッキー。
「!?ラッキー、あなた…」
フロリーナは悲壮な顔で拘束を解かれるラッキーを見た。だが。

ひゅん。

「ギョ?」
気が付くとラッキーは忽然と消え、マリアも上着だけで中身はなかった。
「メロディちゃん、ごめん。オイラ、自由に生きたいけど、自分で決めた自由じゃ
なきゃダメなんだ。それに他人を見殺しにしてもカッコワルイし」
遠く離れた場所で、ラッキーは下着姿のマリアを奪還していた。こういった手品…
縄抜け、抜け駆け、コソドロ、はなんでも来いのラッキーである。


「ふわ! ラッキーのばかばかエッチ! …でもサンキュー」
「今度はマリアの出番だぜ」
「まかしてチョー」
石化しかけた姫、ルーシー、ギャリソンの前にキャミソールとかぼちゃパンツ姿の
マリアは立ちはだかった。石化は途端に解消し、パラパラと砂がかかっただけにな
る。
――彼女の能力、敵対する魔力のレベルダウン、アンチマジックが発動したのだ。
「マリア、ラッキー、大儀でした。よくも、やってくれましたわね。覚悟なさい、
魔に魂を売った者よ!」

きっ!
青く澄んだ瞳が正義の怒りに燃える。バーサーカープリンセスの逆襲が始まった。