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ばーさーかー・ぷりんせす!第3話

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4.

 ジャスコゥの街角で。
「もー! ラッキーのバカ! 役立たず! すかぽんたーん!」
「おっかしーな、うけると思ったのに」
自在に黒猫を出し入れする『手品』…実際は召喚術なのだが…を見せて好評を得て
いたマリアは、結局お代も取れずに逃げ出すことになった。ラッキーがご婦人がた
のヒップをなでただけで下着を抜き出す『手品』を披露してしまったのである。

「――犯罪だっつうの、そういうの!」
ばらばらに逃げる二人。路地裏に飛び込んだラッキーはいきなり人とぶつかった。

どっしん!

「あたたた。ばっきゃろどこに目つけてんだ! …あ?」
「す、すいません。ぼおっとしていたもので」
そこには若く美しい娘がいた。黒のショートカットに青白い肌、海色の大きな瞳。
身なりはお世辞にも裕福なそれとは言い難い。
「! 大丈夫? ケガはない? オイラ、ラッキー。なんだぁ美人ちゃんだって言
ってくれればー。家まで送るよいいだろ?」
そしていきなり真顔でくどく。
「…うふふ。面白いひと。わたし、メロディ。体は大丈夫だけど、こちらこそお詫
びしなくちゃ。よければ家まで寄ってください。姉がいますけど。」
「ええっ、いいの? ラッキーー!! ところでお姉さんも、美人?」


 * * * * *
 

 夜。ギャリソン達が戻ると打ち身、切り傷だらけの姫がいた。
「どうされました!?」
さすがのギャリソンも狼狽気味である。
「あ、あの、1人で留守番してるだけでも、と思いまして…少し家事を、してみよ
うかと」
見れば部屋は荒れ放題、キッチンも散らかりっぱなしである。
「…姫、どうぞお気になさらずおくつろぎくだされ。お身体を労わることも戦士の
勤めですぞ」
しょんぼりしているフロリーナを、ギャリソンたちは慰めた。
「姫さま、神父様からパンを、お医者様から魚の干物をいただきました~」
「では暖かいミルクティでもいれましょう」
姫も元気を取り戻した。が、ひとり足りない。
「…あれ? ラッキーは?」


 その後、でれでれにとろけたラッキーが帰宅した。フロリーナのお説教も馬耳東
風、である。
「いやー、美人の姉妹で、占いも出来る、巷じゃ渚の可能姉妹って呼ばれてるらし
いっすよ。お姉様のゴーザさんもむっちむちでべっぴんだけど、妹のメロディちゃ
んも清楚で可愛いんだよなあ。でへへへ」
「ふむ、ラッキーに優しくするとはよほどの人格者なのですかな。私めも姫と我が
国のことをみてもらいますか」
フロリーナは憮然とした顔で男ふたりの会話に水をさした。
「どうせ騙されてお金を搾り取られるのが関の山ですわ、ふん」
「あれ、姫、妬いてるんですかぁ? 困ったなーオイラもてもてで♪」
「・・・・・・(ぶち)」

どかーん!

 夜中に大きな流れ星が地上から天に上った。


 * * * * *
 

 翌日。
「あ、わ、わたくし、包丁より斧のほうが上手に使えると思いまして…」
魔鎧を着込んだ姫が消え入りそうな声で弁解した。野菜とキッチンがみじん切りに
なっていた。
(修繕費を稼がねば、ここを出ることも出来ませんぞ)
ギャリソンの耳打ちに神妙になるマリア、ルーシーであった。
「ぎひひ、オレ様も手伝ったんだがな、やっぱ姫さんはお姫様だわ」
つつつ、とルーシーが姫の胸元に近づき、ささやく。
「セバスちゃん、おふざけが過ぎるとぉ、継ぎ目に聖水を流し込んで、十字架をぶ
ち込みますよ~?」
「ぎ! …ゴメンナサイ」
横柄な魔鎧も、聖少女は苦手のようだった。