平日ヒーロー
「あっ、片桐君!ちょうどいいところに!」
学校からの帰り道にクラスメイトの音無に声をかけられた。
帰り道が似通っているせいか、音無に会うことは多い。おれは嫌な予感がして、思わず眉を寄せる。
音無に会うときは、たいていロクなことが起こらない。
音無は正義感とエネルギーの塊が人の形をして歩いているような女だ。
タバコをポイ捨てするやつがいれば、ガラの悪い相手だろうと臆せずに注意する。拾った1円玉を150円のバス代を払って交番に届けに行く。
そして、今日は帰宅途中に出会った、迷子の子供の親を探し出すところだという。
子どもを探している人を見かけなかったかと尋ねられただけなのに、音無の勢いと熱意に押される形で、いつの間にか本格的に親捜しを手伝うことになっていた。
音無に会うと、本当にロクなことがない。