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D.o.A. ep.1~7

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聞こえてくる、がつがつと汚らしい咀嚼音に、せりあがってきたものが喉を圧迫するのを何とか抑え込んで、音のほうへ駆けつける。
―――食べていた。
皆まで言うまい。事切れた人間たちの体にのしかかった魔物の群れ。
その中には、無論子供もいる。
血をすすり臓腑を味わうその光景は、盛宴のようだった。
親しんだ村の人間が、餌になっている。

「……ッ!」

ぞっと悪寒。そして灯りがなかった理由に得心する。こんなことなら灯りがあるはずがない。
震える体に活を入れて、反対方向へ向かう。せめて生き残っている人間を救わねばならない。
この村の近くで一番頑丈な建物はリノンの教会だ。
扉を閉めて鍵をかけてしまえば、入ることは不可能になる。みなそれを知っているから、避難するとしたらそこしかない。

道中血走った目で襲いかかってくる魔物を傷付きながら薙ぎ払い、ようやく教会に辿り着く。

「…ッは、はあっ、はあ、…リノン、みんなっ、無事か、俺だ、ライルだ!」
荒い息の混じった叫びに、しかし中からの反応はない。ノブに手をかけると、回る。
そのまま―――何の抵抗もなく、開いてしまった。

教会の中は静かだったが、幸い生き残りがいるようだった。
十の並び立つ石像の前に佇んでいるのは人物の髪は緑色。恐らくリノンだ。
背もたれのある長椅子にも幾人かの人影がある。ライルは少し安堵した。
「無事でよかった。心配したよ、何があったんだ」
返事がない。ライルの声は高い天井にぶつかって、むなしく響く。

「みんな?」

顔を覗き込もうとして―――できなかった。
顔が、ない。
正確には、みな一様に、首から上が、存在しなかった。
足元に落ちているかたまり、まさか、それが。

「う、ぐ、…ッえ、あ」
たまらなくなって、抑えこんでいた圧迫感が解き放たれる。涙で視界が滲んで、体が痙攣した。
呼吸困難に陥るほどに咳き込んで、嘔吐が終わってもうずくまって動けない。

「リノン。な、なんで…っ、こんな、」
ぜえぜえと鎮まらない呼吸の中、背を向けて立っている彼女に問いかける。
ステンドグラスから差し込む月光に照らされた彼女が、ゆっくりと振り返った。

―――違う。彼女ではない。



作品名:D.o.A. ep.1~7 作家名:har