D.o.A. ep.1~7
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(…あれ?)
おかしい。ラゾー村と王都は徒歩1時間強の距離だが、小走りで帰ったので、既に村の灯りが見えているはずである。
しかし、歩けど歩けど、目を凝らしても依然、夜闇の中に灯火は浮かんでこない。
(まさか…そんな、俺としたことが、夜だからって帰る方角間違った…?)
さっと青ざめる。それほど広い国ではないので絶望するほどでもないが、夜道を迷って不安にならないほど、神経は強靭にできていない。
軽くパニックになりかける。
そんなとき、闇の中で、何かがふたつ、光る。同時に、獣のような唸り声。
突如飛び掛かってきたそれに対し、古いほうの剣を抜いたのは、実にぎりぎりのタイミングだった。
ドン、と鞘の先で腹を突かれて、魔物は動かなくなる。失神したようだ。
「…び、ビックリ、した」
ドキドキと激しく胸を打つ鼓動に手を当てて、ライルはそれを改めて観察する。
珍しい姿ではない。昨日、近所のおばあちゃんと孫のリリスを追いつめていたものと同じ種だ。同一かどうかは判別がつかないが、見ているうち、疑問符が浮かぶ。
両前足の鋭い爪が濡れている。まだ間もないようで、草原にも付いている黒ずんだそれ。
―――血、だった。
無論こいつのものではない。
それに、獣臭さはない、人のものだった。
ライルの背に、さっきとは違う冷たさが走る。
どさりと、買い物袋を取り落とす。
酷く嫌な予感が、した。
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しばらく走って、ライルは自分の歩いていた道が正しかったことを知る。
立て札があった。月明かりで何とか読める、それにはラゾーと書かれていた。
だというのに、その先に灯りが見えぬのはどういうわけか。
まさか村の者、みな寝静まったわけではあるまい。多く見積もっても、9時過ぎのはずだ。
いよいよ不安が喉もとにせり上がってきて、額にいやな汗が滲んだ。
作品名:D.o.A. ep.1~7 作家名:har