Love Grace
隆一が階段を降りて玄関先でお母さんに挨拶をしているのを聞きながら愛実はポツンと独り言のように、
「恵実、ゴメンね」
と言った。
「何? キスの事? あたしヤキモチなんか焼いてないよ。一応隆一はあたしにしてくれてるわけだし」
だからあたしは、愛実にそう返した。
「隆一さんに風邪移っちゃったらどうしよう」
心配してたのそこかよっ!
「心配ないって」
「移したらゴメンね」
「いいよいいよ。これから結婚したらずっと一緒なんだから。何度だって移し合いするだろうしさ。それより愛実」
「何?」
「もしかして、隆一に惚れた?」
ニヤニヤ笑いながら言う私の言葉に、愛実はふくれっ面で睨んだ。
作品名:Love Grace 作家名:神山 備