夢と現の境にて
我慢して、我慢して、我慢して、何度も何回も、色んな死に方、色んな死に顔、色んな無残な人の破片を目も塞げないまま見続けて
頭がおかしくなりそうだった。夢を見たくないがために起き続け、周りから睡眠薬を無理矢理飲まされて寝かされたことも、精神安定剤を飲んで自分を抑えることも、高熱に魘される事も、もう大分慣れてしまったことだけど
―――あんな、あんな優しい顔は知らない
自分の身体を両手で力いっぱい抱きしめる。
嘘でも、なんでも、本当に構わないんだ
話せたことに安堵して、信じてもらえて、おまけに自分を手助けしようとして
馬鹿だなぁ、単純だなぁ
そう思うのに涙が溢れた。なんで構うのだろう、なんで信じてしまうのだろう、どうして助けようとしてしまうのだろう。関わったら面倒なことになるなんて目に見えてるのに、どうして、どうして、どうして、どうして…
あんな言葉と笑顔だけでこんな状態になってしまう自分も愚かしかった。そんなに、優しさに飢えているのか。不幸な自分に同情しているのか。
駄目だ止まらない。涙は一度流れればもう止まるところを知らなかった。
もう自分の中で答えが出てしまった。
信じてみようと、いや、信じてみたい、と心の中で叫ぶ声が聞こえる。
知らないから欲しいのかもしれない、知らないからこんなにも単純なのかもしれない
なら試してみればいいと。
騙されたら騙されたで、傷つくのはもう怖くはないから
急に眠気が押し寄せた。疲れもあるが泣きつかれて心身ともに限界が来ている。
俺はそっと目を閉じた。
不意に先ほど見た夢を思い出した。
こうなったのも全てあの夢のせいだ。あの夢がなければ、なければ…
どうなっていたのだろうか
考えたくもなかった。そしたら今自分はこんな、幸せな気分に浸ることなど、なかったのだから。
そんな考えが頭を過ぎったとき、自然と笑いが零れた。
何時の間に俺は、今の状況が幸せだと感じていたのだろうか
恐ろしい夢だ、と思ったあと、いや、違うなと思いなおす。
こんな結果に結びつけた夢だ、もっとふさわしい言い方がある
そうこれは本当になんて――――
―――――悪戯な夢、なんだろう