桃色伝説(仮)
「……名前は?」
零音は目の前に座っている少年を見ながらも問う。
「颯夜だ。よろしく」
「……私は零音。まぁ、よろしく」
零音は適当な挨拶をしながらも横に置いてある刀を少年、颯夜と零音の間に置いた。
「俺のだ……」
颯夜は自分の前に置かれた刀に手を伸ばそうとしたがその手は零音に力強く叩かれた。
「まだ、私の話は終わってない。何で村の入り口で倒れていたの」
「っ……。村の入り口? あぁ、それは……腹が減って倒れていた」
叩かれた手を撫でていた颯夜から零音は自分の家のキッチンの流し台を見た。
そこには零音が食べるときに使う皿の二倍の枚数があった。
「それは……本当そうね」
零音は溜め息をつくと颯夜に視線を戻した。
「本題に移るわ。あなたは何者? こんな物を持って」
零音は颯夜の刀を指差した。
颯夜は一瞬答えに困ったようだがふと、あることに気がついた。
「そう言う零音も持っているだろ」
零音は颯夜の刀を指差していた手を仕舞いながらも自分の腰に付けている刀に手を置く。
「これは……まぁ、村の防衛用だから。それよりも颯夜の刀は?」
「旅には危険が多いから自分を守る為の物だ」
零音は溜め息をつくと目の前に置いてある刀を颯夜に投げ付けた。
「……いいのか?」
「えぇ。最近あいつらが増えてきて、毎日のように村を走っているから」
髪の毛をかき上げていた言った零音はすぐに立ち上がった。
颯夜は零音を視線で追った。
「どこ行くんだ?」
「村の見回り。颯夜も来る?」