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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編序

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 「あいつらはさっきも言ったように、ひがみ根性の塊さ。で、何の才能もないくせにプライドだけは高い。努力はしない。けれど、結果だけは欲しがる。それが通らないとすねて喚く……」
 丸山花世は嫌な顔をしている。
 「女が好きで好きでしかたがないのに、手が出せない。性欲は人一倍。けれど女に声かけることはしねえ。良い服着て、グッズに金かけりゃ女なんかいくらでも向こうから寄ってくる。そんなこともわかんねーのさ」
 そういうことを女である丸山花世であるとか店の主人の前で平気でするデリカシーのなさ。丸山花世は思っている。
 ――こいつは本日中に東京湾に沈めてやったほうが世のためだな……。
 けれど。
 丸山花世はこうも思っている。
 ――バラすのは、全てを吐かせてからだ。
 どうせならば、そのオタクから金をむしる方法って奴をご教示いただこうではないか。シメてコンクリ詰めにするのはその後だ!
 「そういう半端な奴らから金をむしるにはどうするか。それは簡単。『オレはおまえらと同じだ』ってことを言ってやればいいのさ」
 「オレはおまえらと同じ?」
 丸山花世の言葉に酔っ払いは気をよくしている。 
 「ああ、そうさ! オレはおまえらと一緒。おまえらと一緒で、女にもてない。女に相手にされない。悔しい! 悔しくて悔しくて仕方がない! 悪いのは女だ! 女なんだ! そうやってネットで、コラムで、著書の中で2ちゃんねる用語を駆使して何度も繰り返して主張する! ぷきゃーとか言ってな。何がぷぎゃーだよな」
 「……」
 丸山花世はじっとりとした眼差しで大村を見やる。男はそこで不意に思い出したようにして言った。
 「ああ、一応言っとくけど、オレは女にもてないなんてことはないからさ。あくまで、これは、キャラとしての香田哲の話?」
 「どっちでもおんなじじゃねーの? あんたのことを本心から愛することができる奴なんてこの世にいないでしょうよ」
 女子高生の言葉を大村は聞いていない。酒に酔っているからではない。そうではなくて、自分に酔っている。演技性の人格障害、とでも言うべきか。
 「とにかく、オレはもてない。おまえらと一緒だ。オレはお前らと一緒で悲惨なんだ! そうやってアピールするわけよ。そうすれば連中は食いついてくる。馬鹿だから。ただし、ここで注意点!」
 「……」