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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編序

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 興味がわけば誰にでも食い込んでいく。丸山花世はそういう人物。好き嫌いよりも好奇心のほうが優先されるのだ。
 「うん。もっと……そう、普通のオタクだったな。童貞教団の教祖って奴は。少なくとも、あんたみたいな木更津のホストみたいな顔はしてなかった……」
 丸山花世は胡散臭そうにホストを見やり、それから、店の主のほうを眺め、それからもう一度香田哲を見て、ずばりと言った。
 「あんた、ホントに香田哲? あんたが香田哲なら、あの写真の奴は誰?」
 「ああ……なんだ、デクのことか」
 香田哲は軽蔑したようにして言った。吐く息がいかにも酒臭い。
 「デク? デクって何よ?」
 ホスト崩れの酔っ払いは薄く笑って続ける。
 「木偶。あいつは、イベント用にオレが雇ってるんだよ。ただのアルバイト」
 「……」
 「オタクの教祖様が、オレみたいに良い男だったら、まとまる話もまとまらねーじゃんか、なあ!オタクっていう生き物はマジにひがみ根性の塊みたいな奴らだからさ。だから、オタク連中にシンパシーの沸きそうな面したあの馬鹿をスカウトして、イベントとか、サイン会の時だけあいつを前面に押し出してるわけよ……そら」
 香田哲はそう言って、名刺を出してくる。
 
 ――ライター 大村雅資
 
 「大村……雅資? これがあんたの本名?」
 「ああ。で、香田哲はオレの芸名」
 「……芸名ねえ」
 丸山花世は汚物を見るように大村雅資を見つめている。
 「木偶も案外あれで使えるんだよ。アニメのこととかエロゲの知識は十分あるし、自己顕示欲も強い。だから、イベントとかで主役にしてやると大喜びでさ。近頃じゃ、つまんねーギャグのネタ帳までつけやがって」
 香田哲には自分の身代わりの伸張に良い感情を抱いていないようである。
 「ま、勝手にやらせときゃいいんだよ。要所要所は押さえれば金は入ってくるわけだし。鵜飼の鵜みたいなもんだよ、あのデブは」
 ――この野郎、本気で屑だな。
 丸山花世は思っている。こういう手合い、生かしておいて良いのだろうか?
 「オタクから金むしるなんて簡単なことさ。いいかい、花世ちゃん、アホなオタクから金を巻き上げるにはどうしたらいいのか教えてあげるよ……」
 オタクの教祖殿は酔っていることもあって舌が滑らかである。