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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編序

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 ホスト崩れの酔いどれは業界人ぶって喚いた。香田哲。ゴロツキは、自分の名前に大変な自信と自負心をもっているようである。
 「あぁ、あのさー、花世ちゃん、知ってる、オタクの教祖。オタクの教祖『香田哲』様!」
 そして丸山花世はそこでついに激発した。
 「知らねぇよッ!」
 少女は箸を握った拳でカウンターを叩いて激昂する。
 「知らねーッ! っつーか、人が飯食ってる時にちゃあちゃあぱあぱあうるせーんだよ! 酔ってりゃ何しても赦されっと思ったら大間違いぞ、てめーッ!」
 まさに怒髪天衝く大激怒である。香田哲は少女の全力の猛反撃に一瞬沈黙する。案外、この男、心が弱い。
 「あ、ああ、な、なんだ、なんだよ、急に……オ、オレは香田哲、オタクの神様、オタクの教祖香田哲なんだぞ!」
 酔っ払いは怯んでぶつぶつと言い、そこで、丸山花世ははたと何かを思いついたようである。
 「香田……香田哲?」
 どこかで聞いたことがある名前。
 「……香田、か」
 妹分の様子を店の主は面白そうに眺めている。
 「そういや、そういう奴のことを聞いたことあんな……香田。うん」
 丸山花世の態度の変化にホスト野郎は反撃の糸口を見出したようである。虚名は虚名であるけれどパワーでもあるのだ。
 「なんかオタクを集めて変なイベントやってる奴だよね。童貞教団とかいう奴」
 少女の態度にホスト崩れは息を吹き返す。
 「なんだ、なんだ、花世ちゃん、知ってるんじゃん、オレのこと! やっぱ、オレってユーメー人?」
 童貞教団。若いオタクを集めて各地でイベントを開いているおかしな連中。アニメが好きエロゲーが好き、マンガが、ライトノベルが好き。そして何よりも本当は女が大好き! でも女は彼らのことが大嫌い。だから拗ける。拗けた人々が行きつく先。それが童貞教団。業界通の少女もそのような連中のことを知っている。だが……。  
 「……」
 丸山花世は香田哲の顔をまじまじと見つめ……それから不思議そうに首をかしげる。
 「……あんた、それ、ホントなの?」
 「ホントって?」
 出来損ないのホストは鸚鵡返しに訊ねた。
 「だから……私、前に、香田哲の写真見たことあるよ。でも……あんたみたいな顔じゃなかった。もっと太ってて……うん。もっと、変な奴で、見るからにオタクだったよ」