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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編序

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 不遜な娘は中年男のように呻き、カウンターの中にいた美人の主人が顔をあげた。
 「ああ……来たわね」
 色白の美人はちょっと複雑なニュアンスの笑みでもってその日最後のお客を迎えた。それは、親類だけに分かる微妙な表情。そしてカウンター席には……。
 「オタクなんて向上心もなけりゃ、成長する意欲もない、ただ搾取されるだけの馬鹿なんだよねー」
 年の頃は三十ぐらい、だろうか。髪の毛を撫で付けた背の高い男。白のインナーはわざとだろう、上から二つボタンを外している。胸元には金のネックレス。壁にかかっている男のスーツはイタリア製。金の時計はブルガリか。良い男、である。良い男、であるのだが、いかにもちゃらちゃらしている。カタギでは当然ありえない。ホスト崩れであるか。
 「いや、だからね、弘子さん……」
 ホスト崩れはどうもだいぶ酔っているようである。だが、カウンターの上にはビールと枝豆があるきり。あるいはどこかで飲んできたあとなのか。 
 「……腹減った」
 少女はちゃらちゃらしたホストを無視して、カウンター奥に座った。
 「あれ、弘子さん、この子は?」
 女と見れば八十過ぎのババアにだって食いついてくる。不自然に肌を焼きすぎたホストに、不遜な娘は冷徹な視線を送る。
 「丸山花世。ま、妹みたいなもんね」
 「ふーん。花世ちゃんか……」
 ホスト……よく見ると田舎者臭のする若い男のことを倣岸な娘は相手にしない。
 「弘子さんとは似てないね」
 余計なお世話だ馬鹿……とは少女は言わなかった。
 「アネキ、腹減った……なんかくれ……」
 少女のリクエストに店の主人はすぐに応じる。あまりもの麦飯に自然薯。それからアナゴの天ぷらの切れ端。自家製のキュウリの漬物にはとろろ昆布。野良猫のような小娘には十分な量のご馳走である。
 「あー、こりゃいいね……うまい……」
 丸山花世はホストが自分のことを見ていることを知っているが、気にしない。完全な黙殺である。
 「ふーん。花世ちゃんは女子高生?」
 「……」