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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編序

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 「あれは無理だと思うよ。だいたい一番大事な作品作る能力がないわけじゃんか。引き出しも少なそうだし。絵が描けない絵描きと同じで、そんな奴、長く続かねーよ」
 「……」
 「だいたいさー……ケータイの小説見てた子って、お金がいらないから見てるんだよ。金出してまで見る価値ないっていうか」
 本当であれば、それは大村が参考にするべき話。だが、肝心の大村はそこにはいないのだ。
 「金がいらないから見てた。そんな程度のもんだって、みんな知ってる。大村が思うほどみんな馬鹿じゃない。っつーか、むしろあのチンピラが一番馬鹿なんだよ」
 「……」
 女主人は妹分の話を聞いている。それはしばしば起こることであるが、話している少女自身は自分の言葉の価値を知らないのだ。その価値を見出すのはいつも姉。
 「ケータイ小説はタダだからみんなに支持されてた?」
 女主人は合いの手を入れるようにして言った。丸山花世は応じる。
 「うん……いや、それだけじゃない。大事なことは……そだね、そこに偉い編集とか立派な版元が介在してないってことかな?」
 「どういう意味?」
 女主人は大村と話しているときよりもずっと楽しそうである。
 「みんなさ……ケータイ小説読んでる子たちは、自分が底辺にいて、そこから抜け出せないってこと、わかってんだよ。どんなにやってもうまくいかない。人生が明るく幸せに、セレブになんかなれないこと、知ってる。せいぜいキャバクラで働いて安い女になるしかないとかさ」
 丸山花世はちょっと憂鬱な表情を作った。
 「そういう子がさ……まあ、私も安い女だけど、大卒で年収一千万とか二千万とかもらってる大手の版元に勤めてる人とか、そういう連中が作ってる商品をどう思うかってことなんだよね」
 「……」
 「自分には縁の無い連中が、雲の高みから商品とか製品を撒くわけよ。てめーら、これでも食いやがれって……それって、与えられる側からすると哀しいことなんだよね」
 丸山花世はおしゃべりを続ける。
 「……私らは池の鯉なんかじゃない。上から目線の相手から娯楽を撒いていただく。そんな娯楽には誰も食いつかないと思うんよ」
 「そうね」