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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編序

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 「近頃の若いのはどうにもならんよなー。楽して金儲けようとするから。ちゃんとまじめにやれっつーの。ねずみ講みたいなことばっかり考えやがって……」
 「今の人、私より年上よ」
 衝撃的な発言であった。
 「え? あのチンピラ……アネキより年上なの?」
 「そうよ。もう四十」
 「えーッ? 今の偽オタク教祖、四十なの? 全然苦労が身になってねーじゃんかッ! あいつ今までいったい何やってんだよ!」
 「結婚して、離婚して……子供もいて」
 「子供までいんのかよ?」
 丸山花世は目を剥いた。あんな父親、子供の立場から言わせてもらえれば死んでくれていたほうがよほどありがたい!
 「岡島さんが言ってたけれど、二人もお子さんいるんですって」
 「それで女子高生食いまくりとか言ってんのかよ! 頭悪ぃなー」
 小娘は疲れ果てたようにため息をついた。
 「なんか、ゲームとか雑誌とか……四十ぐらいの業界人ってホント、ロクなのいねーよなあ」
 丸山花世は言いながら、四十男が残して行った食器の類をカウンターに戻して寄越す。ガチャガチャとビールのグラスが音を立てている。 
 「ひとかどの人物になってなきゃいけないのにね。でも、そういう人はごく僅か」
 女主人は丸山花世ほど他人に厳しくないので穏やかに洗物をしている。
 「何がケータイ小説だよ……」
 「そうね」
 女主人は言った。大人になりきれないままに早四十。不惑というにしてはあまりにも惑い過ぎる。オタクを侮り、オタクを食い物にしてなり上がりの道を探る。ビッグになると言っていたが、多分、その道を歩いていたのでは一生ビッグにはなれない。
 埋もれ木が必死に狂い咲き。そのたどり着いた先がオタクの教祖。
 信じるほうも信じさせるほうも……救われないし報われない。全ては落ち葉の下の話。
 「でも、もしかしたらケータイ小説で、本当にビッグになるかもしれないわよ、大村さん」
 「アネキ、思ってないこと言わないほうが良いよ。ほかの連中は騙せても、私は分かってっからさ。繰り返すけどもう下火じゃんか。ケータイ小説なんて」
 丸山花世は言いながらきゅうりの漬物を口に放り込んだ。