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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編序

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 「作品の内容理解できてる編集なんてそう何人もいないさ。売れる作品なんて誰もわかってねーんだよ。誰も! どの原稿が売れるか、どの作品が当たるかなんか、誰もわかってねーのさ。っていうか、何が面白いのかも分かってねぇ」
 「……」
 「もちろん分かってる人間はいるぜ。そういうのは、オレが書いたライトノベルもどきとかがゴミだって見抜きやがる。でも、そうでない奴も結構いるのさ。人事異動でビジュアル雑誌から左遷されてきた奴とかさ。連中、保身しか考えてねーから。そういうときに役に立つのが虚名って奴なわけよ! オタクの神様、童貞教団教祖の香田哲さま! 編集としてもさ、能力はあるけど無名な奴よりも、能力はカスでも高名な人間を使いたがるのよ!」
 「……」
 おかしな奴だが……おかしな奴だが、香田哲は自分が『カス』だということは分かっているのか。それはそれで気の毒なこと。
 ――誰かこのあんちゃん、止めてやったほうがよくねーか?
 軽蔑から憐憫へ。丸山花世の心境も微妙に変化している。
 「だってそうだろ? 香田哲には信者がついているわけでさ。パクり……ああ、普通はオマージュって言うんだけど、売れてる作品とかアニメのまんま引き写しでも、香田哲が書いたと言えば、信者はいくらでもお布施してくれるわけじゃん? 実際オレの本、書店で初速だけは速いからさ。入ったら信者がまとめ買い。ま、後続かないけど」
 「……」
 自慢しいなのか自虐的なのか。丸山花世は計算高いホストのことをじっと見ている。
 「編集の奴らは『今、オタクの世界で大人気』とか『ネットの世界で話題沸騰』とかって弱いのよ。特に年齢の高い、ネットとかオタクのことがよく分かってない編集ほど『ネットの世界で大人気』って言葉に弱過ぎ。そういう奴らは、企画売るよりも、コケた時の言い訳をまず気に考えてんのよ。自分で新人拾ってきて新企画を任せるなんてことはしねーんだよ。そんなことをすれば企画がこけたとき、その編集が全責任を負って退職金に響くからさ」
 得々と語るホスト崩れを見ながら丸山花世は思っている。
 ネタ。保身。
 2ちゃんねるのれん中もホストも編集も、実は全てが根っこの部分でつながっている。