革命
「あな……た……な……なぜ……?」
「テオドール様から聞いたの」
テオドール――彼は普段から革命家気取りの節があった。それは言葉の端々に感じられていたが、お坊ちゃんの言葉遊びに過ぎないと、たった数時間前まで二人はそう認識していた。けれど今は――――
「……なぜドリーヌが?」
「私、今日ガエル男爵と別れてから、テオドール様の従者に呼び止められたの。それで、あの……屋敷に行って。でも違うのよ? あなたの客を取ろうだなんてそんな事思ったわけじゃないわ。お願い信じて」
思わず眉根を寄せたビオレッタにドリーヌは必死で弁明しようとしたが、ビオレッタにとってそんな事はどうでもいい事だった。大切なのはなぜドリーヌまで‘革命’に誘われたのか? それだけだった。
「ビオレッタ、本当に違うの。違うのよ」
「分かってるわ、ドリーヌ。だから話を続けて頂戴」
ビオレッタは努めて優しい声でそう言った。これ以上ドリーヌを怯えさせるのは心外だったし、それに何よりドリーヌが以前から密かにテオドールに思いを寄せている事を、彼女は感づいていたからだ。