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ばーさーかー・ぷりんせす! 第2話

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3.

 翌朝、門の前にフロリーナはいた。魔鎧と、それを覆うマント姿で。
「け、わかってんだろう姫さん。オレ様が他の衣類と一緒じゃ力も出せねえのを、
よ。」
もの言う魔鎧が毒づいた。霧は晴れない。
「・・・」
「まぁ、普通の鎧くらいの役にはたつかもな。それじゃあ重くて自由に動くことも
出来ねぇか。ぎひひひ。」
霧に紛れてゴブリンが襲ってくる。
「ゴ〜ブゴブ!」
外套を被った鎧は重く、大斧を持とうとするがびくともしない。
「くっ」
仕方なく短剣を抜くフロリーナ。絶望的な状況の中、死闘が開始されようとしてい
た。

 20匹はいるだろうか。霧からぬっと現れる異形たち。小柄だがいかつい体格に
灰緑の体色、悪鬼の形相。まだまだ隠れているやもしれぬ。
「ゴブゴブー、今夜は鎧の女一人だゴブ。」
ゴブリンの群れが声をあげた。
「さっきもう一人、森にいたガキも連れてきたゴブ」
「"あいつ"、最近エサをあまり差し出さないゴブ」
「構わないから門を破って、たっぷり喰おうゴブ〜!」
どこかに少女が捕らえられているらしい。それでなくとも動くのも精一杯の状態
で、フロリーナは闘っていた。短剣も防戦に使える程度。
ガスッ!
石斧が鎧をかすめる。すぐに門まで追い詰められた。
(くう、このままでは…あら、壁の向こうに、誰か…)
外敵を防ぐ分厚い門だが、耳を近づければ中の声が聞こえる。
「そこをどきたまえ」
涼やかな声。
「へ、へへ。姫…フレアお嬢様は、ひとりで戦うってよぉ」
息切れした素っ頓狂な声。
(セフィロス様? ラッキー?)
「いいか、僕はフレアさんを助けようというんだ。なぜお前みたいなクズがそれを
邪魔するのさ?」
冷たい言葉の合間に、風ともののぶつかる音。
「うぎゃ! ずっげぇ、痛ぐねえっ!!」
(ラッキー、あなた私の恥ずかしい姿をあのかたに見させないため? !私の誇り
を、守るため…?)
「しぶといゴミ虫だな。僕は邪魔をされるのが一番嫌いなんだよ!」
「へ、へへ、ちっちゃい虫にもちっちゃい魂、ってな。東方のえらい先生が言って
た、ってギャリソンの爺さんが言ってたぜ。うぎゃ!」

ビュオゥ!

鋭い風が切り裂く音。青の魔道士が得意とするのは風と木を使った魔法と聞く。
「・・・・」
マントを、震える手で掴む。姫は澄んだ青い眼を正面のゴブリン軍団に向けた。
「――わかっています。ゴブリンは倒しますわ。わたくしの使命ですもの。正義の
ため、…ラッキーの忠義に報いるため!」
フロリーナは外套をばっ、と脱ぎ捨てた。ゆっくりと大斧を手に取り、掌でブンっ
と回転させる。そうして、華麗に死のダンスを舞い始めた。
「ぎゃははは、そうこなくっちゃなあ姫さん。」
やっと魔鎧も声をあげた。

                               ・・・続く。