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ばーさーかー・ぷりんせす!

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7.

「いっ」
ぴた、とフロリーナの脚が止まり、ゆっくりと降りていく。無骨な甲冑はわな
わなと振るえ、胸を押さえてうずくまった。
「い…いや〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」
フロリーナはただの泣きじゃくる少女になった。
動くことが出来ない戦乙女。けれどもオークの王の追撃はやまない。鎧の上か
らとは言え執拗な攻撃が繰り返された。

ドカッ、バキイッ!

「姫さま〜! しっかり〜」
マリアたちの声も届かないかのように、戦意喪失した彼女は、大オークのされ
るがままになっていた。

ゴンッ!

強烈なスイングに兜が飛び、素顔が表れた。无论、鎧は"着けたまま"である。
「が…は…」
朦朧としたままでは、彼女はぼんやりと少年を見た。少年の真摯な瞳が映る。
その目はフロリーナの『裸体』を映している。だがそれ以上に『愛する者を救
いたい』とだけ叫んでいる。
「……!」

ぶち、
ぶち、
ぶちいっ!

何かが彼女の中で切れた。
「うぉおおおおおおおーっ」
姫が吼えた。仁王立ちになり、大斧を構えなおす。

<BGM:『ワルキューレの行進』へ>

反撃が始まった。
「ぬああっ、貴様たちさえいなければ! 呪われた魔鎧なんか着ないで済んだ
のよっ!」
斬撃、斬撃、斬撃! 優雅さなど微塵もない、息をもつげぬ攻撃。

そんな風景を、ラッキー達は遠巻きに眺めていた。
「あ〜あ、いま、姫様はあのガキんちょにだけすっぽんぽんに見えるんだよな
あ」
ラッキーがぼやく。
「そう、あの魔鎧の『心の正しい者には見えない』呪い。そのせいで、"裸の王
女様"
みたいなお姿なわけですからな。それでも健気に戦う姫様のなんといじらしい
ことか」
ギャリソンがしれっと言う。
「ぐぐぐ、なんでオイラには見えねえんだよう!? 神様ぁ〜、こんなに頑張っ
てんだから姫のヌード、オイラにだって見せてくれよう!」
血の涙だ。よほど見たいのだろうがその考えが矛盾していることに気づいていな
い。

「ぶひいっ!?」
突然の猛攻に後ずさりするオーク王。

ドカ! ドガ! ドガッ!

狂戦姫は鬼神の如き形相で短剣も抜き、十字に組んだ。
「隣国の王子様との婚約も決まってましてよ! 鎧を着けて魔物からお助けした
ら、二度と会いたくないと言われましたわ! 出会う殿方、皆に露出狂と罵られ
ましたわ! うわーんっ!」
子供泣きで両手を振り回し攻め立てる。
「ぶぶぶぶぶ、ぶひゃーーーーーー!」
豚の王は見事に吹っトンだ。魔鎧の胸にある口が開き、瘴気をはき始めた。
「ぎひひひひ、やるぞ! フロリーナ姫!」
「よろしくてよ!でえいっ!」
鎧が大きく息を吸い込む。吐き出した瘴気の風に剣と斧で火花を散らせると、そ
れは業火となってほどよく叩かれたまるまる一匹の豚を襲った。

ぐおっ!

「ぶっきゃ----っ…」
ごおおおお...ぱち、ぱち。

炎と煙がひき、不謹慎極まりないくらい、香ばしい匂いが漂ってくる。その中で
えぐえぐと嗚咽をもらす少女がひとり、佇んでいた。

「姫さま、かわいそう〜」
「かわいそうだね。ショボン」
小さなシスターと魔女は清めの水とケープを手に駆け寄っていった…。

作品名:ばーさーかー・ぷりんせす! 作家名:JIN