ばーさーかー・ぷりんせす!
8.
奇跡的に村びとたちは無事であった。騒ぎも収まり、全員が家に戻れた。
翌朝。旅立ちの準備をする一行に、赤毛の少年が駆け寄って来た。ウィルの兄の
マシューである。
「本当に、なんてお礼を言っていいか」
ウィルもやって来た。
「お姉ちゃんたち、もう、行っちゃうの?」
おずおずと、ウィルはフロリーナに聞いた。
「ええ。この村にはもう魔物はいないし、わたくし、あんな姿を見せてしまいま
したもの…おかしかった、でしょう?」
憔悴した笑顔で答えるフロリーナ。
「どうせ金も出ねぇし…ごぶ!」
都合四箇所から拳と蹴りがラッキーを襲う。当分癒しの魔法はなさそうだ。
「ううん」
ウィルは言った。
「ちがうよ、お姉ちゃん、きれいだった! つよくて、わるいやつをやっつけ
て、金色の髪がひらひらして、天使さまみたいだったよ!」
偽りのない、澄んだ瞳。
「……!」
フロリーナはウィルを優しく、やさしく抱きしめた。
「ありがとう。でもやはり行かなくてはならないわ。あなたみたいに困っている
子がいるかもしれないの」
少年もしぶしぶうなずいた。
「うん、しょうがないね。ガンバってね!」
* * * * *
・エピローグ
「では、まいりますぞ、姫」
「ばいばーい、きゃははは」
「さよ〜なら〜」
カバンの中からも鼻歌が聞こえる。手を振るウィル。歩みだす一行に、マシュー
は叫んだ。
「あ、あの!せめてお名前を! 天使様!」
「あー、これだから下々の者は。いいか坊主こちらにおわすはフロリ…」
ズボ。マリアとルーシーがラッキーにズタ袋を被せた。
「わたくし、天使ではありませんわ。一介の賞金稼ぎ、『バーサーカープリンセ
ス』、とでもお呼びになって。」
ごきげんよう、と優雅に微笑み、一行はまた荒野へと、消えていった。
<おしまい>
作品名:ばーさーかー・ぷりんせす! 作家名:JIN