ばーさーかー・ぷりんせす!
6.
暗雲立ちこめる中、無気味な山の頂上近くに一行はやって来た。
「先のウィルぼっちゃんをお助けした時に、おおかたのオークを退治したのが
幸いでしたな」
ギャリソンがのんきに言った。
「でもでもー、あの魔法を使うオジサンをやっつけたのはワタシとは、ナベシ
マだよ。」
マリアが何時の間にか現れた黒猫をだっこしながら言った。
「そうね、偉かったわ、マリア、使い魔さん」
「うにゃあ」
既に第2ラウンドは始まっていたらしい。会話によれば、魔物だけではなく、
大人の魔法使いとも対峙したようだ。
・・・一体どうやって? それはまた別の機会に語られるだろう。
魔鎧を既に着込んだフロリーナは供の功績を讃えた。ラッキーだけは相変わら
ず着替えを覗こうとしたため、顔が奇妙に歪んでいる。
「ラッキーさん、エッチなのはぁ、いけません~。癒しの術は、おあずけです
よ〜」
ルーシーの言葉も、彼の脳の中枢まで届いてはいないかもしれない。
その時。
「ぶぅひぃいいいいいいいいぃぃぃぃ…」
雷鳴のような雄叫びが空気を震わせた。
「! 来ましたわ。みなさん、お下がりなさい」
地響きをあげ、山の洞窟から身の丈は3mのはあろうか。黒い鎧をまとった醜悪
なオークがフロリーナたちの前に現れた。オークの中のオーク、オークの王、
ロード=オブ=オークである。
「ぶふううぅ」
ごおっ!
もともとがオークである以上、頭の中身は知れたものである。とは言え体格に
合った豪腕から繰り出される鋼の棍棒の攻撃は想像以上のものだった。
ガキィ!
単調だが重い一撃が容赦なく姫を襲う。
「ぶっほっほっほっほ〜」
「くっ、やりますわね。」
さしもの戦姫も防戦一方になった。起死回生の蹴りを放つ。鎧を着けていると
は到底思えぬハイキックを繰り出した…とき。
「にいちゃーんっ」
幼い声がする。よろよろと山を登ってきたのは、赤毛の少年ウィルだった。兄
を助けようと一行を追って来たのである。そして、姫を見とめると。
「?」
フロリーナの姿をじっと見つめ、つぶやいた。
「…おねえちゃん、なんで『はだか』なの?」
作品名:ばーさーかー・ぷりんせす! 作家名:JIN