ばーさーかー・ぷりんせす!
3.
そう、人語を解す魔鎧(まがい)には名前に恥じることなく、呪いがかかっていた
のだ。王族のフロリーナでなければ着けることも出来ない、しかし着けることで起
こる、避けることのかなわぬ悲劇。
ズン、ズズン。
重い足音が響く。狂戦姫(きょうせんき)が叫ぶ。
「覚悟なさい、醜いオーク。正義の鉄槌をお受けなさい!」
銀に鈍く光る重厚な鎧。胸の場所には醜悪な悪鬼の顔がある。
「ぶひ?」
「だれだあ?」
突然現れた重騎士に、面喰らった魔族だが、背丈と声で中身が少女と察しがつくや
否や。
「ぶひゃひゃ? ナニ言ってんだ、いいからこの小娘、喰っちまいな」
「ぶひ〜!」
醜悪な顔をねじ曲げボスらしき人豚が叫ぶ。ブヒブヒと子分たちが迫る。雪崩のよ
うな棍棒の攻撃を、分厚い鎧を着けているとは思えない俊敏さと跳躍で狂戦姫はか
わす。
ブン!
「ぶぎゃあ!」
子供ひとりが隠れそうな斧を軽々とふるい、オークたちはまな板の鯉ならぬ豚にな
っていく。吹き上がる血の匂い、阿鼻叫喚…
「また使っちゃったね、鎧」
「うん、姫さまぁ、また泣いちゃいますね〜」
ルーシーとマリアはささやきあった。
作品名:ばーさーかー・ぷりんせす! 作家名:JIN